型破りで耽美的。リック・オウエンスの創作を振り返る大規模展が6月にパリ・ガリエラ宮で開催
ファッションデザイナー、リック・オウエンスのパリ初回顧展「Rick Owens, Temple Of Love」が6月28日よりモード美術館、パリ市立ガリエラ宮で開催される。

カルト的人気を誇るファッションデザイナー、リック・オウエンスのパリ初回顧展「Rick Owens, Temple Of Love」が6月28日よりモード美術館、パリ市立ガリエラ宮で開催される。
本展では、オウエンスがロサンゼルスで活動を始めた初期作品からパリで発表している最新コレクションまで、約100点以上を展示。自身が芸術監督として企画に参画し、ガリエラ宮キュレーションチームと協力して美術館の外壁や庭園まで続く独自の展示経路を構成するという。
精神性や儀式的要素に強い関心を持つオウエンスのクリエーションは、象徴派の作家ジョリス=カルル・ユイスマンスの文学作品から現代アート、さらには20世紀初頭の名作映画など、幅広いジャンルの作品からインスピレーションを得ている。
ロサンゼルスでパタンナーとしてキャリアを積み、1992年に自身のブランドを設立、2003年よりパリを拠点に活動を続けるオウエンスのアイテムには、主には黒やグレーなどの無彩色を纏った、加工され朽ちた表情の素材が多用される。名クチュリエと称えられるマダム・グレの作品に着想を得た豊かなドレープを描くカッティングに支えられる流麗たるシルエットは、ときに人体の範疇を超え、身体改造や彫刻を想起させる。実験精神と優美さが両立するオウエンスのクリエイションはとても耽美的で、まるで衣服の形態をもつ現代アートのようであり、その挑発的なファッションショーはもはやパフォーマンス・アートだ。あるショーではプロのモデルの代わりに黒人女性を中心に構成されるステップダンスチームを起用し、別のショーでは男性モデルの性器を露出させ物議を醸した。

ガリエラ宮での展示では、オウエンスの創作プロセスを示す個人資料やビデオ映像、未公開のインスタレーションも紹介される。さらにはギュスターヴ・モロー、ヨーゼフ・ボイス、スティーブン・パリーノらの作品も展示し、彼の芸術的ルーツを多面的に探求。また、彼の妻であり共同制作者でもあるミューズ、ミシェル・ラミーとのカリフォルニア時代の寝室を再現するなど、彼女の存在・影響力にも光を当てる。今年64歳を迎える稀代のファッションデザイナーによる先鋭的なクリエーションと、従来の美の規範を揺るがす深遠な思考に触れることのできる絶好の機会だ。
Rick Owens, Temple Of Love
場所:パリ市立ガリエラ宮(10, avenue Pierre Ier de Serbie 75116 Paris)
会期:2025年6月28日~2026年1月4日
時間:10:00~18:00(金曜日は21:00まで)
休み:月曜日
料金:14ユーロ(本展のみ、常設展込みは17ユーロ)
https://www.billetterie-parismusees.paris.fr/content#