ハーバード大学所蔵のマグナ・カルタの複製が「本物」だった! 研究者がオンライン検索で発見

ハーバード大学ロースクールの図書館に複製として所蔵されていたマグナ・カルタ(大憲章)が、実は本物だったことが明らかになった。

ロンドンで保存されるマグナ・カルタ。Photo: Chip Somodevilla/Getty Images

ハーバード大学が約80年間にわたり複製として所蔵していたマグナ・カルタ(大憲章)が、1300年のエドワード1世治世下で発行された原本であることが判明した。

現代の法律の基盤とも言われるマグナ・カルタは、1215年に反乱を起こした貴族たちとイングランド王ジョンとの間で交わされた文書で、国王とその政府が法の上に立つものではないという原則を宣言している。ジョン王の治世以降も条項の見直しが行われ、度々再発行が行われていた。マグナ・カルタはイギリスのコモン・ローの基礎となり、アメリカ合衆国の建国にも影響を与えた。

ガーディアン紙によると、この発見はロンドンのキングス・カレッジの中世史教授デイビッド・カーペンターによってなされた。彼はマグナ・カルタを全て調べたいと思い、ハーバード大学ロースクールのオンライン図書館にアクセスし、その中の「HLS MS 172」と振られた複製に目を通した。すると、カーペンターは、これは本物ではないかとひらめいたという。彼はその時のことを声明でこう振り返っている。

「私はすぐに思いました。なんということだ、これは1300年のエドワード1世によるマグナ・カルタの原本そのものに見えるではないか、と。もちろん、見た目は人を欺くものですが」

48×47センチの原本のサイズともぴったり一致していたが、文書は摩耗して染みも付いており判読が難しかった。カーペンターはイースト・アングリア大学の中世史教授ニコラス・ヴィンセントとともにスペクトル画像と紫外線光を使用して調査し、文書を一語一語判読することに成功した。ヴィンセントがガーディアン紙に語ったところによると、真贋判断の鍵となったのは書き方だったという。「国王エドワードの冒頭のE、そして次のDも大文字という異例のスタイルです。これは、現在確認されている6つのエドワード1世版の原本に共通して見られる方法です」と説明した。

カーペンターは、マグナ・カルタの中でもエドワード1世版は「世界で最も価値のある文書の一つ」であると主張する。その理由について、「統治者が法に従うという基本原則が記されているからです。王は一方的に『投獄しろ、首を切れ、財産を差し押さえる』と命令することはできず、もしそうしたいなら、法的プロセスに従わなければならない。これは西洋の法と民主主義の伝統の礎石なのです」と話す。

なぜこのような重要な資料がハーバード大学の図書館に流れ着き、埋もれていたのかというと、文書が辿った波乱の運命にある。カーペンターとヴィンセントによると、このマグナ・カルタはイギリスのカンブリア州旧議会区で発行され、有力貴族のローザー家に受け継がれた。その後ローザー家と親交のあった、1700年代後半に起こった奴隷貿易反対運動の主導者として知られるトーマスとジョン・クラークソン兄弟、イギリス王立空軍の上級司令官フォースター・メイナードの手に渡った。そしてロンドンの書籍販売業者スウィート・アンド・マクスウェルがメイナードから42ポンド(現在の為替で約8000円)で購入し、1946年にハーバード大学に27ドル(同・約4000円)で売却した。

1世紀近くもマグナ・カルタが調べられもせず複製とされていた理由は分かっていない。ヴィンセントは、「販売時に誤って分類されたのは理解できます。1946年は誰もが疲れていたのです」と話した。(翻訳:編集部)

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