新教皇レオ14世にゼレンスキー大統領が聖母子像を贈呈。バチカンで和平交渉開催の申し出への感謝

新しい教皇レオ14世は5月18日、ローマ・カトリック教会の指導者として初めて執り行ったミサの後でウクライナヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談。ゼレンスキー大統領は教皇庁がバチカンロシアとウクライナの和平交渉を主催することを申し出たことに対して感謝し、聖母子像のイコンを贈った。

2025年5月18日、バチカンで行われた就任ミサの後にゼレンスキーウクライナ大統領と会談する教皇レオ14世。Photo: Vatican Media/Vatican Pool - Corbis/Getty Images

5月18日、レオ14世は教皇として初となるミサを執り行った。その後、列席したウクライナヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談。アートネットによれば、ゼレンスキー大統領はその際、教皇にイコンを贈ったという。

この会談は、5月16日にレオ教皇ならび教皇庁がウクライナとロシア間の会談をバチカンで主催する準備があるという意向を示し、平和が実現するよう全力を尽くすと述べた後に行われた。

イコンはキリスト、聖母、聖人などを描いたもので、ロシア正教では信仰の媒介であり、尊い存在として扱われている。ゼレンスキーが手渡したイコンは、ロシアとの戦闘の最前線であるハリコフ地方にあった弾薬の木箱の断片に聖母子像が描かれたものだった。

正教会ジャーナリスト連合によると、ゼレンスキーがレオ教皇に贈ったものはロシアやビザンチンの宗教美術で人気のある「聖母エレウサ(優しさの聖母)」として知られる図像の一例で、ベールで頭を覆っていないマリアは東方のイコンとしては珍しいという。

イコンの贈呈に際して、ゼレンスキーはXに次の言葉を寄せた。

「多くの民族にとって、子どもを抱いた母親の姿は守られるべき生命の象徴です。 今日、私たちは教皇レオ14世に、弾薬の木箱の断片に描かれた特別なイコン《幼子を連れた神の母》を贈りました。 これは私たちの子どもたちのためのものです。それは戦争で苦難を強いられている子どもたちや、ロシアが意図的に拉致し、強制移送した子どもたち、親たちが故郷のウクライナで帰りを待ち望んでいる子どもたちのことです」

2022年から続くロシアのウクライナ侵攻は、いまだ停戦の糸口を見つけられていない。 停戦交渉に積極的に関与してきたアメリカのドナルド・トランプ大統領は5月19日、ロシアのプーチン大統領との電話会談後に停戦要請を撤回し、両国が自ら和平交渉を行う必要があると述べたとCNNが報じた。

一方ゼレンスキー大統領は、今年2月にワシントンD.C.のホワイトハウスの執務室でトランプ大統領とJDヴァンス副大統領とで会談したが、激しい議論に発展。 その後、両大統領はローマ法王フランシスコの葬儀の際に再び言葉を交わしたが、この際は穏やかなものとなった。また、レオ教皇の就任ミサでは、ヴァンス副大統領とゼレンスキー大統領が握手する姿が見られた。

レオ14世は教皇として行った初めての演説で、ウクライナにおける「真に公正で永続的な平和」と、全ての戦争捕虜の解放を求めた。さらに、具体的には言及しなかったが、子どもたちは家族のもとに帰すべきだと付け加えた。

レオ教皇と会談した後、ゼレンスキー大統領はXで、改めてバチカンの「ウクライナとロシアの直接交渉のプラットフォームとしての役割を果たす用意がある」という発言に感謝し、「世界中の数百万の人々にとって、教皇は平和の希望の象徴です。聖座はその声と権威により、戦争の終結において重要な役割を果たすことができるのです」というメッセージを送った。

あわせて読みたい