「模様はリズムで、色は音符」──感覚と科学から色彩理論に取り組むブルックリン・A・ソウマホロ【New Talent 2025】

US版ARTnewsの姉妹メディア、Art in America誌の「New Talent(新しい才能)」は、アメリカの新進作家を紹介する人気企画。2025年版で選ばれたアーティストから、直感的色彩と頭脳的な構図の絵画で見る者を引き込むブルックリン・A・ソウマホロを紹介する。

ブルックリン・A・ソウマホロに会ったのは、ロサンゼルスのグラッセル・パーク地区にある工場のようなスタジオだった。彼は制作のさまざまな段階にある油絵を指差しながら、絵を描くことを自らのもう1つの情熱の対象であるサイクリングにたとえてこう説明してくれた。

「ペダルを1回ずつ踏みながら山を登るのと同じ忍耐力で、一筆ずつ塗り重ねながら構図を作り上げるんです」

確かにソウマホロの絵には、そうしたストイックさと情熱が強く感じられる。そして、整然とした構図と直感的な色の使い方の絶妙なバランスから伝わってくるのは、前向きなエネルギーだ。

パリで生まれ、2019年からロサンゼルスを拠点に活動しているソウマホロは、感覚と科学の両方から色彩理論にアプローチする独学の画家だ。西アフリカのテキスタイルデザインに着想を得た鮮やかな色彩とダイナミックなパターンで構成される彼の絵は、別次元への入り口となり、見る者をその世界へと誘う。

「感情と直感で色を選ぶのに対し、パターンの研究は非常に頭脳的です」

棚から白いバインダーを何冊か取り出したソウマホロは、個々の絵の配色を決める方法を詳細に記したページをめくりながらそう説明してくれた。自分の考え方をわかりやすく伝えるため、彼は紙に縦線と横線でグリッドを描き、その真ん中に斜めの線を走らせた。そうやって彩度を段階的に上げていくことで、シームレスなグラデーションが作れることを彼が示した瞬間、スタジオはある種の研究室になったかのようだった。ソウマホロはデータを示しながら、配置によってある色は静的に、ある色は動的になるのだと語る。

彼はごく自然に、左脳と右脳、論理と感情のバランスを取る。その絵には機械のような正確さがあるが、一方でアーティストの手わざが感じられる筆致もある。彼は科学に加え、共感覚的な手法も取り入れながら、色や模様を音楽のリズムのように捉える。同じアルバムを繰り返し聴きながら指揮者のようにリズムの型を分析し、色彩の受け皿となる構図作りための「振動、周波数、抑揚を探す」のだという。

「模様はリズムで、色は音符です」と話す彼の絵のもう1つの大切な要素は、計算された下塗りだ。蛍光色の黄緑やマゼンタといった高彩度の顔料を使った下塗りは、描かれた形が生き生きと踊るように見える効果を生み出す土台となりつつ、わずかな隙間から顔を出している。

ブルックリン・A・ソウマホロ《Window, Ylw/Ble.1.24》(2024) Photo: Courtesy François Ghebaly, New York and Los Angeles
ブルックリン・A・ソウマホロ《Window, Ylw/Ble.1.24》(2024) Photo: Courtesy François Ghebaly, New York and Los Angeles

昨年、ロサンゼルスのフランソワ・ゲバリー・ギャラリーで開催された個展「The Open Window(開いた窓)」で発表されたソウマホロの新作は、南仏を旅したときに見た風景に着想を得ている。それはアンリ・マティスのインスピレーション源となっていた風景を思わせるものだった。たとえば、《Window, Pnk/Prl.1.24》(2024)の赤紫色とワインレッドの鮮烈な色彩は、《Window, Ylw/Ble.1.24》(2024)のスチールブルーと青緑の組み合わせと引き立て合い、マティスの絵画《Open Window, Collioure(開いた窓、コリウール)》(1905)のフォーヴィスム風の色彩を想起させる。

近代美術史において重要な位置を占め、陽光が降り注ぐ地中海の色合いと象徴的なフォルムを持つマティスのこの絵は、ソウマホロが新作のシリーズを制作する上で大きな原動力になった。ちなみに、マティスは第1次世界大戦が始まってすぐ、この絵と同じ窓を描いた内省的で影のある作品《コリウールのフランス窓》(1914)を制作している。ソウマホロは、油彩画の幅広いルーツに敬意を表するため、美術史と関わるのを楽しんでいると語る。その姿勢について彼は、「現在を理解するために、過去に対して心を開く」と表現している。(翻訳:野澤朋代)

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