徳島県、石上純也の展覧会を直前中止──建築家「県民には知る権利がある」

徳島県の要請により開催直前で中止を余儀なくされた「徳島文化芸術ホール」展をめぐり、建築家・石上純也が会見を開いた。石上は、「県との協定は現在も有効」であり、「なぜ展示が県の方針と相容れないのか理解できない」と疑問を呈した。

「徳島文化芸術ホール」従来案のパース。Photo: ©︎ 石上純也建築設計事務所

6月1日から徳島市万代町の第一倉庫で開催予定だった、建築家・石上純也の「徳島文化芸術ホール」をテーマとする展覧会が、徳島県からの要請を受けて急遽中止となった。

同展は、公益社団法人日本建築家協会(JIA)四国支部徳島地域会が主催する予定だった。テーマとなっていたのは、徳島市文化センター跡地で計画され、その後見直しとなった、石上による県立新ホール「徳島文化芸術ホール」案。会場では、ホールの模型や図面、ドローイングなど、実施設計に関わる資料約2000点が展示される予定だった。

しかし、開催3日前の5月29日、会場である第一倉庫を所有・管理する徳島県から、JIA側に展覧会中止の要請があったという。

会場に掲示された展覧会中止の告知。Photo: 石上純也建築設計事務所提供

徳島文化芸術ホールをめぐっては、旧徳島市文化センター跡地に県立の大型ホールを整備する計画が進められ、2021年に石上純也らを含む共同企業体が設計者として選定された。その後、実施設計まで完了していたが、2023年の徳島県知事選で後藤田正純知事が当選。後藤田知事は工事費削減や計画見直しを公約に掲げており、就任後、従来案を停止し、建設予定地を旧文化センター跡地から藍場浜公園へ変更した。また、県は今年2月、藍場浜案の建設費について「現時点で約200億円」との試算を示しており、数字の上では、旧計画の総事業費193億9300万円を上回る。一方で県は、藍場浜案について事業者公募を2度実施したが、建設費の高騰や人手不足などを背景にいずれも応募がなく不成立となっている。

県側がJIA側に伝えた中止要請の理由には、「県の目指すまちづくりにつながらず、県有地での開催にふさわしくない」ことや、「混乱を招きかねない」ことなどが含まれていたとされる。

「県民は選択するための情報を得る権利がある」

石上は6月1日に徳島市内で記者会見を開き、「展示内容については県側にも確認しながら準備を進めていた。なぜ開催直前になって中止要請がなされたのか理解できていない」と述べた。

また石上は、ARTnews JAPANに寄せたコメントの中で、「旧文化センター跡地案に関する県との協定は現在も有効であり、計画そのものが法的に消滅したわけではない」ことから、県の説明に対し、「県の中で存続している計画の展示が、なぜ県の目指すまちづくりにつながらないのか」と疑問を呈した。県側はこの点について公式な見解を示していない。

「徳島文化芸術ホール」のスタディ模型。Photo: ©︎石上純也建築設計事務所
「徳島文化芸術ホール」の内観パース。Photo: ©︎石上純也建築設計事務所
「徳島文化芸術ホール」の外観パース。Photo: ©︎石上純也建築設計事務所
「徳島文化芸術ホール」のパース。Photo: ©︎石上純也建築設計事務所

さらに石上は、展覧会について「自身の設計案を紹介する場であるだけでなく、旧計画と現在進められている新計画を県民が比較検討するための機会でもあった」と説明。「県民にはそれぞれの計画について知り、選択するための情報を得る権利があるのではないか」と投げかけ、こう続けた。

「自分たちは未来の徳島の風景を夢見て計画を積み上げてきた。工事に着手できる段階まで設計を進め、約2000点に及ぶ実施設計図書も完成している。それらが誰の目にも触れないまま消えてしまうことは非常に悲しい」

また、海外でのプロジェクトも多く手掛ける石上は今回の県の対応について、「表現の自由に対する制限や言論統制を想起させる」としたうえで、「現代の日本では、こうした権利は憲法によって守られていると思っていた。今回の判断が行政裁量の範囲なのか、それとも別の理由によるものなのか、県から十分な説明を受けたい」と訴えた。

会見では、県に対して情報公開請求を行ったことも明らかにし、「何も説明されないまま中止となった現状を理解するためにも、経緯を明らかにしてほしい」と求めた。

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