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石上純也がフレデリック・キースラー建築芸術賞を受賞。日本人では伊東豊雄に次ぎ2人目

建築家、石上純也が、アートと建築の分野で権威ある賞として知られる、オーストリア・フレデリック・キースラー建築芸術賞2024を受賞した。日本の建築家が同賞を受賞するのは、2008年の伊東豊雄に次いで二人目となる。

フレデリック・キースラー建築芸術賞2024を受賞した建築家の石上純也。Photo: ©︎Chikashi Suzuki

フレデリック・キースラー建築芸術賞は、その実験的かつ革新性でのちの建築家や芸術家に多大なる影響を与えたオーストリアの建築家、フレデリック・キースラーの妻リリアンが、夫の意思を継いで1997年に設立。以来、2年に1度、アートと建築の分野で活躍する「並はずれた才能」が選出され、5万5000ユーロの賞金が贈られる。記念すべき第1回はフランク・ゲーリーが受賞しており、これまで、オラファー・エリアソン(2006年)、ブルース・ナウマン(2014年)、シアスター・ゲイツ(2021年)といったアーティストたちがこの賞に輝いている。

第13回フレデリック・キースラー建築芸術賞の審査員長を務めたノルウェーの建築家で、オスロやニューヨークほか世界7カ所に拠点を持つ建築設計事務所スノヘッタ(Snøhetta)の共同創業者であるシェティル・トレーダル・トールセンは、石上純也を選出した理由をこう語る。

「石上純也は、建築デザインに対するユニークなアプローチで、今日の建築界において傑出した存在。彼は、その並外れたプロジェクトを通じて建築という伝統的な業界の境界を押し広げており、その姿勢は、フレデリック・キースラーの実験性や革新性とも強く類似している」

これまで、神奈川工科大学 KAIT工房(日本・神奈川県/2008年)や、洞窟のようなレストラン「メゾン・アウル」(日本・山口県/2018年)、モスクワ科学技術博物館のミュージアムパーク(ロシア・モスクワ/2019年)、谷間のチャペル(中国・山東省/2016年)といった画期的なデザインを数多く実現させてきた石上は、2019年、毎年どの建築家が起用されるかに世界的注目が集まるイギリス・ロンドンのサーペンタイン・パビリオンを手がけ、国際的な評価を確立した。

極めてユニークな石上作品の中でも今回の審査員団が「最も感銘を受けた」と称えるのは、2018年に完成したボタニカルガーデン アートビオトープ水庭(日本・栃木 *20244月リニューアルオープン予定)だ。また、石上の妥協なき姿勢と卓越したインスピレーションは、「今日の建築業界の主流である経済主導のプラグマティズムにとって代わる、先見性と詩的な選択肢を提示している」として、「建築という分野に根本的な新しい視点を与えている」と評価した。

「栄えあるフレデリック・キースラー建築芸術賞を受賞できたことを光栄に思います。この受賞は、卓越性を追求し、建築の限界に挑戦し続ける私を鼓舞するものです」

受賞に際してこうコメントを寄せた石上は、1974年神奈川県生まれ。2000年に東京藝術大学大学院美術研究科建築科修士課程を修了後、プリツカー賞建築家である妹島和世建築設計事務所で研鑽を積み、2004年に石上純也建築設計事務所を設立した。2010年には、第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞を受賞するなど、権威ある賞を多数受賞している。2023年11月に発売された建築専門誌『a+u』は、石上がこれまで手がけた作品だけでなく世界中で現在進行中のものも含む29のプロジェクトを紹介しながら、その思考を深く考察している。

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