「国民の創造力を育むためには投資が不可欠」──アーティストらが英新政権に提言書を提出
アーティストや芸術関係者がイギリスで新たに誕生したスターマー政権に対して、アーティストの支援と美術教育の充実を求める公開書簡を提出した。署名者のなかには、ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したソニア・ボイスなどが含まれている。
イギリスのキア・スターマー新政権に対して、「長期的に視覚芸術を支援するためのロードマップ」を明確にするよう強く訴える書簡が、このほどデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)に提出され、数千人に及ぶアーティストや芸術関係者が署名している。
4000人を超える署名者のなかには、2022年のヴェネチア・ビエンナーレでイギリス代表作家を務め、金獅子賞を受賞したソニア・ボイスや、2024年ヴェネチア・ビエンナーレでイギリス館の代表作家を務めたジョン・アコムフラが含まれる。それ以外にも、モナ・ハトゥムやジェイド・モンセラット、ジョージ・ショウ、ハルーン・ミルザといった芸術関係者も名を連ねた。
イギリス総選挙が行われる1週間前、国内にある20以上の視覚芸術の団体が、「イギリスのビジュアルアートとアーティストを支持・支援するための政策提言」をまとめたことを発表。その提言の一つが、資金削減や制作スタジオの閉鎖、そして生成AIに対処するべく、スマートフォンの売上の一部を視覚芸術に回すというものだった。
これ以外にも、フリーランスのアーティストやクリエイティブワーカーを保護する「フリーランサー委員」を任命すること、著作権で保護された作品の創作や共有、デジタル機器での配布からライセンス収入を集めることに焦点を当てた基金の設立などが挙げられた。また、「ビジュアル・リテラシーを国家カリキュラムに組み込む」一環として、子どもたちが文化施設を毎年訪問することの保証も提案されている。
この書簡は、アーティストの権利を保護する非営利団体「DACS」と啓蒙団体「a-n The Artists Information Company」、そして「Contemporary Visual Arts Network(CVAN)」によってまとめられた。この書簡に署名したアコムフラは次のような声明を発表している。
「新政権は、イギリス国民のクリエイティビティを育むための投資、フリーで活動するアーティストへの支援、そして創作活動に必要な場を新たに確保することで、アーティストたちが今置かれている状況を正す機会を得た。このマニフェストは、ビジュアルアートがこれからも創造されていくために必要な枠組みを明示したものだ」
また、a-nのチーフ・エグゼクティブであるジュリー・ローマックスは、次のように付け加えた。
「政府が私たちのようなアーティスト団体と協力してくれると確信しています。協力関係が実現することで、アーティストの生活と視覚芸術業界の健全性を高める法改正といった小さな変化を起こせるに違いありません」
新政府予算は10月30日に、財務大臣のレイチェル・リーブスによって発表される。(翻訳:編集部)
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