世紀の国家的汚職「1MDB事件」続報。不正流用資金で入手した約2億円相当のピカソ作品の返還命令
マレーシアの政府系投資会社1MDBの汚職事件をめぐり、顧問弁護士をかつて務めたルー・アイ・スワンに対して約2億円相当のピカソ作品を返還するよう米司法省が命じた。ルーは、ゴールドマン・サックスが引き受けた債権販売で不正流用された1MDBの資金を使い、この作品を購入していた。
米司法省は、レーシアの政府系投資会社1マレーシア・デベロップメント(1MDB)の顧問弁護士を務めていたルー・アイ・スワンが2014年5月にクリスティーズから127万ドル(約1億9700万円)で落札されたパブロ・ピカソのドローイングを返還するよう命じた。
連邦検察が2023年8月に提出した訴状においてルーは、ゴールドマン・サックスが引き受けた債権販売で不正流用された1MDBの資金を使い、クリスティーズからピカソの鉛筆画《Trois femmes nues et buste d’homme》(1969)を購入したとして起訴している。
ARTnews US版が入手した文書によると、ルーは5月27日にピカソのデッサンの没収に同意する宣誓供述書に署名していた。 米司法省のマーガレット・A・モーサーは7月17日に没収判決を提出し、22日にその判決は判事のデイル・S・フィッシャーによって承認されている。
これ以外にもフィッシャーは、1MDB資金略奪の首謀者とされるジョー・ローが所有していたピカソやクロード・モネ、フィンセント・ファン・ゴッホ、ジャン=ミシェル・バスキア、ダイアン・アーバスの美術品の差押えを命じている。
司法省は押収されたアーティストの作品名は明らかにしていない。だが、連邦検察が6月14日に提出した文書によると、ローが所有していたゴッホの《La Maison de Arles》、ピカソの《Nature morte au crâne de taureau》、バスキアの《Redman One》、ダイアン・アーバスの《Boy With the Toy Hand Granade》、そしてモネの《Saint Georges Majeur》を差し押さえたほか、モネの《睡蓮》を売却したことで得た2530万ユーロ(約42億6000万円)の利益を差し押さえたという。
ブルームバーグによると、フィッシャーはまた、ローが1MDB資金からの「犯罪収益」を使って母親のために購入した3つの「完璧な」ダイヤモンドの没収を命じた。米国政府は、7.35カラットの指輪に約117万ドル(約1億8100万円)、そしてイヤリングには約62万8000ドル(約9740万円)の価値をつけている。これらの宝飾品は、ビヨンセやアデルといったセレブに人気のあるニューヨークのデザイナー、ロレイン・シュワルツが手がけたものだ。(翻訳:編集部)
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