マーク・ロスコ、フィレンツェで大回顧展──フラ・アンジェリコとの時代を超えた対話も

20世紀を代表する画家で、大型のカンバスに複数の色面を重ねるカラーフィールド・ペインティングで知られるマーク・ロスコの大回顧展がフィレンツェで開催中だ。ロスコに深い影響を与えたとされるフラ・アンジェリコの絵画と並べた展示など、ルネサンスが発祥・開花したこの地でしかできない企画が実現されている。

イタリア・フィレンツェで開かれている「Mark Rothko in Florence」展の一部、サン・マルコ美術館「Mark Rothko in dialogue with Fra Angelico」の展示風景(2026年4月1日撮影)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images

イタリアフィレンツェのストロッツィ宮殿財団が、アメリカ抽象表現主義の巨匠、マーク・ロスコ(1903-1970)の貴重な回顧展「Rothko in Florence(フィレンツェのロスコ)」を開催している(8月23日まで)。70点を超える展示総数は、イタリアにおけるロスコ展としては最大規模のもので、そのキャリアの全てを辿る意欲的な内容だ。

ウフィツィ美術館にほど近いストロッツィ宮殿を中心に、フィレンツェ市内のサン・マルコ美術館およびメディチ・ラウレンツィアーナ図書館の3カ所で展示中の作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)メトロポリタン美術館ワシントン・ナショナル・ギャラリーロンドンテートパリポンピドゥー・センターなど、世界有数の美術館や著名な個人コレクションから集められている。

キュレーションを担当したのは、ロスコの息子であるクリストファー・ロスコとインディペンデント・キュレーターのエレナ・ジェウナで、フィレンツェでのルネサンス期の名作との出会いがロスコに大きな影響を与え、画業の発展を促したことに焦点が当てられている。まさに、現代美術の巨匠とルネサンス期の巨匠の稀有な出会いを称える特別な企画展と言える。

フィレンツェのサン・マルコ美術館で行われている「Mark Rothko in dialogue with Fra Angelico」の展示風景(2026年4月1日撮影)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images
「Mark Rothko in dialogue with Fra Angelico」が行われているサン・マルコ美術館の至宝、フラ・アンジェリコの《受胎告知》(2026年4月1日撮影)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images
ミケランジェロが設計したフィレンツェのメディチ・ラウレンツィアーナ図書館では「Mark Rothko in dialogue with Michelangelo」が行われている(2026年4月1日撮影)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images
フィレンツェのストロッツィ宮殿で行われている「Rothko In Florence」の展示風景(2026年3月12日撮影)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images
フィレンツェのストロッツィ宮殿で行われている「Rothko In Florence」の展示風景(2026年3月12日撮影)。Photo: Roberto Serra - Iguana Press/Getty Images

ロスコがフィレンツェを初めて訪れたのは1950年、妻のメルとイタリアを旅行したときのことだった。彼はサン・マルコ修道院のフラ・アンジェリコのフレスコ画や、ミケランジェロが設計したメディチ・ラウレンツィアーナ図書館の階段室に見られる独創的な建築美に深く感銘を受け、それが1950年代後半に描かれたシーグラム壁画の着想源になったとされる。ロスコは1966年にもフィレンツェを訪問し、自らのイマジネーションをさらに深化させた。

薄く溶いた絵の具を何層も重ねるロスコの繊細な作品の中には、15世紀のイタリア美術、とりわけフラ・アンジェリコのフレスコ画技法に通じるものがある。また、ロスコとアンジェリコがともに目指していたのは、遠く離れたところにあるようでいて、同時に近しい気分を呼び起こす一種の超越的な感覚だ。アンジェリコは神々と地上の現実との接点を通して感情的な共鳴を生み出し、ロスコは鑑賞者を様々な感情の深みへと導く瞑想的な色彩で抽象表現や色彩理論の既成概念に挑んだ。

今回の回顧展では、フラ・アンジェリコとロスコの作品を並べ、また、ミケランジェロによる建築空間で展示することで、それぞれの対話が展開される。主催者のストロッツィ宮殿財団は、「ロスコが古典的な均衡と自由な表現との間にある緊張関係をどのように絵画へと昇華させ、色彩を通じてキャンバスの二次元性を超越した新たな空間認識を創り出したかを探求する上で、フィレンツェの建築や街並みは理想的な舞台を提供している」と述べている。

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