ユダヤ教の祭日直前にパリの5施設に緑の塗料。パリ市長は「反ユダヤ主義は共和国に存在するべきでない」と抗議
5月30日の夜から31日の早朝にかけて、パリ中心部のホロコースト記念館、3つのシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝堂)、ユダヤ人経営のレストランに相次いで緑の塗料がかけられた。これは、今年は6月1日の日没からはじまるユダヤ教の祭日「シャブオット」に先立つ犯行だった。

5月30日の夜から31日の早朝にかけて緑の塗料がかけられたのは、パリ4区、マレ地区にあるアール・ヌーヴォーの名建築としても知られるアグーダス・ハケヒロスシナゴーグと、19世紀末に建てられたトゥールネル・シナゴーグ、ホロコーストに関する資料を展示するショア記念館、ユダヤ人が経営するレストラン「シェ・マリアンヌ」、そして20区にあるシナゴーグ。
シナゴーグの現場付近には塗料のスプレー缶が落ちており、レストラン「シェ・マリアンヌ」のファサードには開いた塗料の缶が置かれていた。31日の午前4時半に、ホロコースト記念館の監視カメラ映像に黒服の男が夜間に塗料を噴射する様子が映っていたとル・モンドは伝えている。
ユダヤ電信通信社(JTA)が6月1日に報じたところによると、これまでフランスでは、イスラエルによるガザ攻撃への抗議は赤い塗料を使うことが一般的だったが、緑色は今回が初めてだという。現場にメッセージは残されておらず、犯行声明も今は出ていない。

今回の事件について、フランスのユダヤ系団体CRIFはJTAの取材に対して、「犯人やその動機が何であれ、これらの行為は単に壁を標的としているのではありません。フランスのユダヤ人たちの記憶、そして彼らの礼拝所に暴力的に汚名を着せるものです。これらの破壊行為は我々の共和制の価値観に対する汚点です」と抗議の声を寄せた。
また、ブルーノ・ルタイロー仏内務大臣はXに、「ユダヤ人コミュニティを標的としたこの凶悪な行為に、私は深い嫌悪感を抱いています」と投稿。パリ市長のアンヌ・イダルゴは報道機関向けの声明を発表し、パリ当局はこの事件について告発を行う予定であると述べて次のようにコメントした。
「私は、このような脅迫行為を最も強い言葉で非難します。反ユダヤ主義は、私たちの街にも、私たちの共和国にも存在すべきではありません」
一方、イスラエルのイツハク・ヘルツォーグ大統領は声明で、これらの行為に「憤慨している」と述べ、フランス当局に対し、「犯人を裁きにかけ、ユダヤ人コミュニティをあらゆる種類の憎悪と攻撃から守るため、迅速かつ断固として行動する」よう求めた。ヘルツォーグの曾祖父であるジョエル・ヘルツォーグ・ラビは、アグーダス・ハケヒロスシナゴーグの建設に尽力し、最初の主席ラビを務めた人物だ。(翻訳:編集部)
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