アメリカ先住民の装飾文化に新たな光──ヨーロッパ入植後の暮らしに迫る再調査

アメリカのワイオミング州東部で出土した5000点を超える遺物について、考古学研究者たちが新たな分析を行った。貝殻やヘラジカの角を加工したネックレスやペンダントなどの出土品は、ヨーロッパ人との接触による先住民の歴史の過渡期をより深く理解する手がかりとなることが期待される。

ワイオミング州キャスパーのリバー・ベンドで発掘された遺物。(a)さまざまな尖頭器、(b)鉄のやじり、(c)鉄針。Photo: Courtesy Pelton Et Al

ワイオミング州キャスパーのノース・プラット川に近いリバー・ベンド地域では、1970年代に建設計画が持ち上がったため、土地造成に先立って考古学調査が行われた。当時、数百平方メートルにわたる範囲が掘り起こされたものの、そのうちの約75%が、地中に残されているかもしれない遺物とともに埋め戻されてしまったという。

それでもこの調査では、17世紀にヨーロッパ人による北米への入植が始まってから約1世紀後の1700年から1750年に、リバー・ベンドに暮らす先住民がいたことが明らかになった。遺物の一部に関する当時の分析では、3つの切れ込みが入ったやじりや滑石(ソープストーン)など、ショショーニ族の居住地跡に特徴的な物が確認されたことから、東ショショーニ族の先祖が住んでいた可能性が高いとされた。

今回、出土品を改めて分析したのは、ワイオミング州の考古学者スペンサー・ペルトンとその同僚、1970年代の発掘に携わったキャロリン・バフが参加した研究チームで、骨や石、金属、貝殻、角、顔料などが対象となった。その結果は先月下旬、人類学専門誌のプレーンズ・アンソロポロジスト(Plains Anthropologist)に掲載されている。

この地域の遺物に関する研究は約30年にわたって休止状態だったため、まだ分かっていないことは残されている。とはいえ、ペルトンらによる分析は、ヨーロッパの物質文化と接触する前後の、先住民の歴史における過渡期に新たな光を当てるものだ。

最も古い時代の遺物には、グレートプレーンズや北米の他の文化圏で見られる、貝を円盤形に加工したビーズがある。このビーズは円盤の中心に穴を開けて糸などを通し、ネックレスとされていた。発見されたときには、遺骨の首や手首、足首を飾っていたものと考えられる。数は少ないが巻き貝の貝殻も確認されており、貝殻を入手するために長距離の交易や移動が行われたことを示している。のちの時代には、貝殻はネックレスやイヤリングに加え、衣服の装飾にも使用された。

また、貝殻とヘラジカの角を用いたペンダントは1800年代より後の時代のもので、1830年代頃に巻き貝に取って代わったと見られている。さらには、貝でビーズを作っていた痕跡も見つかっており、研究者たちはおそらく金属の錐(きり)が穴を開けるのに使用されたと考えている。この方法は現在でも広く用いられており、錐が貝殻による装飾品の生産量増加を促進したと思われる。

グレートプレーンズ地域の先住民の衣服と装飾品は、地位や戦功、社会における立場を示すものとされる。リバー・ベンドはそうした装飾品の宝庫として、歴史の転換期を垣間見ることができる貴重な場所だ。今回の研究結果は、この地の先住民の装飾文化をより深く理解し、ヨーロッパ人との接触や交易を通じて、それがどのように変化したかを明らかにする一助となるだろう。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい