任天堂とルーブル美術館のコラボに幕。「ニンテンドー3DS」、10余年に及ぶ音声ガイドを引退

ルーブル美術館で提供されていたニンテンドー3DSによる音声ガイドサービスが終了した。任天堂の代表取締役フェローを務める宮本茂の革新的な構想で始まったこのサービスは、位置情報機能や豊富なコンテンツで人気を博した。

2013年、「ニンテンドー3Dガイド ルーヴル美術館」をニンテンドーダイレクトで発表する任天堂の岩田聡(写真右)と宮本茂(写真左)Photo: screenshot/via YouTube

2012年、ルーブル美術館は任天堂とパートナーシップを締結し、携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS LL」を美術館ガイドとして導入したが、9月1日をもって10年以上続いたこのサービスが終了した

この提携の背景には、任天堂の代表取締役フェロー(現在)の宮本茂が長年温めてきた構想があった。美術館によく足を運ぶ宮本は、当時提供されていた音声ガイドの使いづらさを感じていたと振り返る。当時の音声ガイドは、ポータブルCDプレイヤーを使い、作品の横に書かれた番号に対応するトラックを選択することで解説が流れる仕組みで、操作性に課題があった。

また、ニンテンドーDSの普及を受けて宮本は、「DSのパブリックスペース利用」を2009年頃から構想していた。東京ディズニーリゾート内にあるショッピングモール、イクスピアリでのテスト運用を経て、海遊館や新江ノ島水族館、京都文化博物館といった文化施設や、京都精華大学の卒業制作展で、音声ガイドプログラムが入ったDSが導入された。

こうした経験を経て、2012年に宮本の念願叶ってルーブル美術館とのパートナーシップが実現。任天堂はルーブル美術館にニンテンドー3DS LLを5000台貸与し、革新的な音声ガイドサービスの提供を開始する。各端末には3万5000点の収蔵品から厳選された700点以上の作品情報が搭載され、作品画像や動画、3Dモデルに加え、30時間を超える音声解説も収録されていた。さらには、位置情報機能により、館内の現在位置に基づいたオリジナルの順路を作ることもできた。

ルーブルでガイドサービスが始まった当時、スマートフォンはまだ普及しておらず、従来の音声ガイドに取って代わったこのレンタルサービスは大きな人気を博した。任天堂はその後、「ニンテンドー3Dガイド ルーヴル美術館」を一般販売している。

しかし、「Newニンテンドー3DS」を最後に3DSシリーズの後継機は作られず、任天堂の主力製品がNintendo Switchとなった。2020年には3DSシリーズの生産を完全に停止し、その間に作品や展示に関する情報取得の手段として、スマートフォンが主流となった。

後継のガイドシステムに関する情報は、ルーブル美術館から発表されていない。(翻訳:編集部)

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