気候変動の影響でツタンカーメン王の墓が崩壊の危機!? 最新調査で深刻な損傷が発覚

エジプト・ルクソールの王家の谷にあるツタンカーメンの墓が、気候変動の影響で崩壊の危機に陥っていると最新の研究で明らかになった。専門家らは、墓の崩壊と壁画への損傷を防ぐため、早急な補強と湿度管理を求めている。

ツタンカーメンの墓の内部。Photo: Getty Images

気候変動の影響で、ツタンカーメンの墓の崩壊が進んでいるという研究結果が、学術ジャーナルheritage scienceで発表された。

研究では、エジプトのギザにあるカイロ大学建築保存学部長であるサイード・ヘメダが現地調査を行った。その結果、近年の鉄砲水の影響で、墓の側壁や、内部の階段、傾斜路、各室の天井に相当な損傷が起こっていたことが分かった。

論文によると、特に1994年10月に起こった鉄砲水の被害が最悪のもので、泥水が埋葬室に流れ込み、新たな亀裂を開き、湿度レベルを上昇させて菌類の繁殖を引き起こし、壁画に深刻な損傷を与えたことが分かった。さらに、主に多孔質の石灰岩とエスナ頁岩で構成された墓周囲を著しく弱めたという。これについてヘメダは、「頁岩が湿気と接触すると膨張し、本質的に墓陵を破砕する可能性がある」と記している。この不安定性に加え、墓の上にある山が天井に莫大な負荷をかけて亀裂を生じさせているという。これにより「亀裂に雨水が浸透し続け、墓の構造的完全性と内部の壁画を危険にさらしている」と説明する。

ツタンカーメンの墓の天井に走る亀裂。Sayed Hemeda

ツタンカーメンの墓は、20世紀における最も重要な考古学的発見のひとつだ。1922年11月4日、イギリスの考古学者ハワード・カーターが長年の発掘調査の末、他の墓の瓦礫に覆われた先で発見した。ツタンカーメンが生きた第18王朝の王たちの墓に比べて規模が小さいのは、若くして突然亡くなったツタンカーメンの死後、急いで作られたためと考えられている。だが、この小ささゆえに盗掘者に見つかることなく、見事な壁画や副葬品がそのままの状態を保ち続けてきた。

論文では、この損傷は気候変動によって引き起こされる鉄砲水と湿度の上昇に関連しており、今後何らかの措置を行わないと墓の岩盤破裂を引き起こす可能性があり、少なくとも天井からの落石の発生や亀裂の拡大は避けられない問題だと警鐘を鳴らす。

ヘメダの同僚である、カイロ大学のモハメド・アティア・ハワシュは、Independent Arabiaに対し、手遅れになる前に、ツタンカーメンの墓を保存するためのさらなる措置を講じるべきであり、例えば墓の上の山の荷重を軽減すべきだと主張する。そして、「災害はいつでも発生する可能性があります。王家の谷を守るために行動を起こさなければなりません」と付け加えた。

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