今週末に見たいアートイベントTOP5:中谷ミチコの作品を「触って」鑑賞、森栄喜が新シリーズを発表
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. コレクション展Ⅰ小企画 美術の中のかたち―手で見る造形―中谷ミチコ 影、魚をねかしつける (兵庫県立美術館)
作品に「触る」新たな環境体験
兵庫県立美術館の前身である県立近代美術館時代から開催を続けているシリーズ展「美術の中のかたち—手で見る造形」。35回目を数える今回は、三重を拠点に活動する彫刻家、中谷ミチコの作品を展示する。中谷は凸凹が反転したレリーフで知られている。モチーフが存在するはずの空間には何もなく、何もないはずの空間に存在するように見える作品を通して、物体の「不在性」と「実在性」を問い続けている。
本展では、横幅10メートルを超える中谷の最新作を展示する。同作は中谷の最大級の作品であり、初の無彩色となる。作品には直に触れることができ、白い世界に浮かび上がる影をヒントに人物の形を探してみたり、手で触りながら輪郭を見つけたりと、これまで視覚で楽しむものとして存在していた彫刻の新たな楽しみ方に出会うことができる。
コレクション展Ⅰ小企画 美術の中のかたち―手で見る造形―中谷ミチコ 影、魚をねかしつける
会期: 9月5日(金)~12月14日(日)
場所:兵庫県立美術館 常設展示室5(兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(11月3日、11月24日は除く)11月4日、11月25日
2. ベトナム、記憶の風景(福岡アジア美術館)
アートで振り返るベトナム激動の100年
1975年に終結したベトナム戦争は、ベトナムが大国アメリカを退け、既存の世界の在り方を大きく変えた世界の歴史の転換点として知られている。ベトナム戦争終結50周年を記念し開催する本展は、欧米列強による植民地支配と独立への闘い、難民の発生やグローバル化など、近代以降の世界の課題を絶えず経験してきたベトナムの激動の100年を、ベトナムのアーティストによる美術作品約110点から辿る。
展覧会は、フランス植民地下で近代美術草創期を担ったベトナム人美術家たちを紹介する「理想―描かれた祖国のイメージ」、ベトナム戦争を巡る当時の熱気を表した作品を集めた「熱気―駆け巡る戦場のリアル」、戦争終結後、統一国家として新たな国づくりのため都市開発や工業発展が進むベトナムの風景を描いた「発展と郷愁―変わりゆく故郷のすがた」、戦争を直接経験していない若い世代の美術家たちが家族や個人の物語から歴史を語りなおす「追憶―歴史を携えて生きること」の4章で構成される。
ベトナム、記憶の風景
会期:9月13日(土)~ 11月9日(日)
場所:福岡アジア美術館(福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7・8F)
時間:9:30~18:00(金土は20:00まで)
休館日:水曜
3. 三原聡一郎+東恩納裕一「認識と道徳、自然と自由を媒介するもの」(Safi、Heimlichkeit Nikai)

「日常」への目線を変えるアート
白くフラットな光を放つ丸型の蛍光灯が絡み合う「シャンデリア」シリーズなど、日常や身の回りのありふれたものをモチーフに作品を制作し続けてきた東恩納裕一によるアートディレクションのもと、音、泡、放射線、虹など身の回りにあるさまざまな物質や現象について独自の方法で芸術へ変換する三原聡一郎が2人展を行う。
同スペースは、元質店だった民家を改修したユニークな空間。東恩納は2022年、アーツ千代田3331のカフェに置かれたモーターで回転する小ぶりな3基のコンポストで初めて三原のことを知り、同スペースを訪れた三原が同スペースに興味を持ったことで本展に繋がった。三原は同スペースの1階にフルーツパフェが名物のカフェがあることから、毎日美味しいフルーツが扱われる環境、ある部分は食され、またある部分は廃棄される有機物と触れることのできる環境で、継続している物質循環の実験を行う。
三原聡一郎+東恩納裕一「認識と道徳、自然と自由を媒介するもの」
会期:9月19日(金)~11月3日(月)
場所: Safi、Heimlichkeit Nikai(東京都大田区大森北6-13-3 Safi 2F)
時間:11:00〜17:00※Safi営業時間に準ずる
休館日:火~木
4. 中村翔大「オリエント」/「青と緑」(タカ・イシイギャラリー 六本木・京橋)
2拠点で開催。中村翔大、同スペース初の個展
1987年山梨県生まれで、現在はベルリンを拠点に活動する中村翔大。中村は、自身の記憶や観察、そして絵画や映画、写真など多岐にわたるイメージのリサーチを制作の起点とし、それらのイメージを編集し再構成することで作品を生み出す。絵画に描かれた、屋外の庭や風景と室内の境目が溶け合うようなイメージや、内省的な空気を纏う人物の姿は特徴的ともいえる没入的な情景を生み出す。同ギャラリーで初となる中村の個展は、六本木と京橋の2拠点で開催される。
六本木では、水彩の制作に取り組んできた中村が、初めて紙作品を発表する。サイズを統一した紙作品が12点並ぶ本展は、中村がイメージの原点とするもの—車窓からの風景—の特質が大きく反映されているといえる。会場で作品を追うごとに異なる風景が現れる様子は、車中から窓越しに見る風景の移り変わりを思わせる。京橋では、水や青というキーワードから連想される風景、木々のある風景、そして水浴者を描いた新作のペインティング約10点を展示する。
中村翔大「オリエント」/「青と緑」
会期:10月4日(土)~11月1日(土)
場所:タカ・イシイギャラリー 六本木(東京都港区六本木6-5-24 complex665 3F)、京橋(東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月祝
5. 森栄喜「Moonbow Flags」(KEN NAKAHASHI)
森栄喜が新シリーズを発表
森栄喜の2年ぶりとなる個展。森は「intimacy」(2013)で同性の恋人や友人との親密な関係を、「Family Regained」(2017)では血縁に基づかない新たな家族のあり方を探求してきた。前回の個展「ネズミたちの寝言|We Squeak」(2023)では、一人ひとりが眠るという受動的な行為を通じて抵抗の可能性を探るインスタレーションを展開した。今回は、同じく個の行為に着目しながらも、「眠る」ことから「旗を掲げる」ことへと視点を移し、個人の行為が社会の中でどのように機能し得るのかを問い直す。
展示室には、過去10年間に撮影した未発表のポートレートと、旗の幾何学的構成を参照して描いた白い図形をフォトグラム技法によって重ね合わせた約20点が並ぶ。本作の着想の一つとなったのは、1968年5月にフランスで起きた「五月革命」のスローガン「敷石の下はビーチ!」という言葉である。パリの学生たちは、舗道の敷石を剥がし、機動隊に投石した。抑圧の下に広がる自由の可能性を示唆するこの言葉を起点に、森は国家や権力の象徴としての「旗」と、日常の中で見られるキッチンのタイル模様や壁紙の幾何学模様とを組み合わせ、固定されたシンボルの意味を再解釈する試みを行った。11月15日の17時から、森とダンサー・振付家である藤田一樹のパフォーマンスが行われる(予約不要)。
森栄喜「Moonbow Flags」
会期:10月10日(金)~12月20日(土)
場所:KEN NAKAHASHI(東京都新宿区新宿3−1−32新宿ビル2号館5F)
時間:13:00~20:00(11月5日~9日は10:00~20:00)
休館日:日月(11月9日を除く)






















