新たなフェルメール作品発見か。《赤い帽子の女》の下に描かれた絵画は本人作の可能性

ワシントンD.C.ナショナル・ギャラリー(NGA)は2020年にヨハネス・フェルメール(1632-1675)の絵画4点を調査した。そのうちの1点、《赤い帽子の女》(1666-67頃)の下に男性の肖像画が描かれていたことが判明していたが、このほどフェルメールが制作した可能性が高いと発表された。これまで彼による男性の肖像画は見つかっておらず、大きな発見となる。

フェルメール《赤い帽子の女》(1666-67頃)の下に描かれていた男性の肖像画。Photo: National Gallery of Art, Washington, D.C.

ワシントンD.C.ナショナル・ギャラリー(NGA)はコロナ禍の休館期間を利用して、2020年にフェルメールの絵画4点を高度な画像技術と顕微鏡を用いて調査した。そのうちの1点、23×18センチの《赤い帽子の女》(1666-67頃)の下に男性の肖像画が描かれていたことが分かっていたが、このほど新事実が発表された。

2020年の調査の段階では、肖像画の筆致が緩く、フェルメールの洗練されたスタイルとは異なっていたため別の画家によるものと思われていた。だが、さらに調査を行ったところ、下絵は一貫して緩い筆致で迅速に仕上げられており、その後精緻に加筆し作品が磨き上げられていた。この手法は現在の美術学校でも教えられているものであり、歴史上ほとんどの芸術家が用いてきた典型的なアプローチと言える。

フェルメール《赤い帽子の女》(1666-67頃)Photo: National Gallery of Art, Washington, D.C.

また、肖像画の男性は、1650-55年頃に流行したつば広の帽子とタッセル付きの紐で結ばれた襟のついた服を身につけており、フェルメールにとってその時期は《マルタとマリアの家のキリスト》(1654-55)が描かれた最初期にあたる。

これらのことを踏まえてNGAの専門家たちは、男性の肖像画が彼自身の作品である可能性が高いと主張している。これが事実であれば、フェルメールによる最初期の、唯一の男性の肖像画の発見となる。彼の作品には男性が登場する《天文学者》(1668)《地理学者》(1668)があるが、それらは風景の一部として描かれており、肖像画とはみなされない。

だが一方で、アートニュースペーパーはこの発見を「まだ証明も否定もされていない」と報じており、ほかの可能性も示している。フェルメールの死後、1676年に編纂された財産目録によると、彼は同じデルフトの画家カレル・ファブリティウス(1622-1654)による男性の肖像画を2点所有していたことが記されている。《赤い帽子の女》の下に描かれた肖像画はファブリティウスのものである可能性があるというのだ。

マウリッツハイス美術館蔵の《ゴシキヒワ》(1654)で知られるファブリティウスは、レンブラントの最も期待された弟子だったが、自身の工房の爆発事故に巻き込まれて32歳の若さで死去した。現存する彼の作品はわずか12点とされており、もしファブリティウスが描いたものであったとしても重要な発見となるだろう。(翻訳:編集部)

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