蔡國強の個展にチベット関連団体が抗議。ヒマラヤ山麓での花火アートは「文化的暴力行為」
ロンドンで個展が始まったばかりの蔡國強に対し、チベット関連団体が抗議を行った。蔡は先頃、ヒマラヤ山麓の花火アートが環境面から問題視され、イベントを実施したアウトドアブランドとともに謝罪している。

世界5都市に拠点を持つ大手ギャラリー、ホワイトキューブがロンドンに構えるスペースの1つで、中国出身の蔡國強による火薬絵画の個展「Gunpowder and Abstraction 2015–2025(火薬と抽象 2015-2025)」が先週末開幕した。
それに先立つ9月19日、蔡はアウトドアブランド「アークテリクス」とのコラボで、ヒマラヤ山麓での花火アートパフォーマンスを披露。しかし、このイベントは周囲の環境への配慮を欠いているとしてオンライン上で批判が殺到する事態となり、両者は謝罪の意を表明した。アークテリクスはカナダ発のブランドで、現在は中国資本の傘下にある。
アート・ニュースペーパー紙が伝えるところによると、蔡のロンドンでの個展開幕前日の9月25日に、ギャラリー前で抗議集会が行われたという。抗議に参加したのは、イギリスを拠点とする英国チベット人コミュニティとフリー・チベットの2団体で、声明で次のように述べている。
「蔡國強は倫理的に正当化できない文化的暴力行為を犯しました。この行為により、彼のロンドンでの展覧会は極めて物議を醸すものとなっています」
問題とされている花火パフォーマンス《The Rising Dragon(昇龍)》が実施されたのは、中国チベット自治区シガツェ近郊にある海抜約5500メートルの高原地帯。CNNの報道によれば、環境への影響に対する懸念や批判が噴出したことを受け、同地の共産党委員会は、「シガツェ市党委員会と市政府はこの件を重く受け止め、直ちに現地へ調査チームを派遣して調査を行う」との声明を出した。
ホワイトキューブの広報担当者はアート・ニュースペーパーに対し、同ギャラリーは「これらの団体の懸念を認識している」と回答。蔡國強はホワイトキューブの正式な所属アーティストではないが、今年6月以降、両者は協力関係にある。現在開催中の個展もその一環で、11月9日まで行われる。(翻訳:石井佳子)
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