ゴッホ作品にスープをぶちまけた活動団体が解散を発表。「結成当初の目的は達成された」?

美術館に展示されている作品にスープをかけたり、身体の一部を施設の壁に貼り付けるなど、過激な抗議活動を行ってきたイギリスの環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」が4月末で解散することを発表した。

抗議を行うジャスト・ストップ・オイルの活動家たち。2025年3月5日に撮影。Photo: Getty Images
抗議を行うジャスト・ストップ・オイルの活動家たち。2025年3月5日に撮影。Photo: Getty Images

フィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》にトマトスープを投げつけたり、ストーンヘンジにオレンジ色のコーンスターチをまき散らすなど、美術品や遺跡を対象に過激な抗議活動を行ってきた環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル(JSO)」が、4月末に活動停止することを発表した

活動停止の理由として、JSOが訴えてきた石油・ガス採掘プロジェクトの新規承認の阻止という結成当初の目的が達成されたことを挙げており、イギリス国内では、これを禁止する法律が3月初旬に採択されている。エネルギー・気候変動大臣を務めるエド・ミリバンドは、この政策によって「新たなグリーンエネルギーの未来を歩むことができる」と語った。

抗議活動の停止発表に際してJSOのメンバーであるハナ・ハントは、イギリス首相官邸前で、「私たちは抗議の際に着用していたハイビズ(高視認ベスト)を4月末に脱ぐことにした」と述べ、こう続けた。

「新規の石油・天然ガスの採掘中止を求めるジャスト・ストップ・オイルの要求は現在、政府の方針に組み込まれ、私たちは近年の歴史上、最も成功した抗議団体のひとつとなった。また、化石燃料の採掘の問題が大々的にニュースに取り上げられるきっかけをつくり、44億バレル以上の石油が採掘されることを阻止したと同時に、新規の石油・天然ガスの採掘が違憲であるという判決を裁判所が下す足がかりを築いた」

JSOが発表した声明によれば、4月26日に正式に活動を終了し、ウェストミンスター宮殿前の国会議事堂広場で最後の抗議活動を実施する予定だという。

同団体がこれまで実施してきたアートアタックによって、所属する活動家たちの中には、2023年にイギリス国内で施行された公共秩序法に基づき、禁固刑などの実刑判決が下された者もいる。国連特別報告者のミシェル・フォストはこれらの判決に対して、「一切の暴力をともなわない」抗議活動に対して禁固刑が言い渡されることは、「イギリスのような民主主義国家では下されるべきではない」と批判的な立場を表明している

JSOは活動停止を発表した声明を次のように結んでいる。

「JSOが解散したからといって、市民の抵抗が終わるわけではない。 2030年代までに地球の気温が2℃上昇すると推測されているなか、科学の力は明確な未来図を提示している。 何十億もの人々が移住を迫られる、あるいは死に追いやられる可能性があり、世界経済は崩壊するだろう。 これは避けられない。なぜなら私たちは道徳的に堕落した政治家たちに裏切られてきたから。

企業や億万長者が世界中の政治を腐敗させている今、私たちは異なる方法で抗議活動を続ける必要がある。この現実と向き合い、この時代に私たちが負うべき責任を果たすための新たな戦略を構築している。来る嵐から私たちを守る方法として、革命に勝るものはないのだ」

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