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  • 2024.06.20

世界遺産のストーンヘンジが環境活動家の標的に。総選挙前の英スナク首相は「恥ずべき破壊行為」と批判

6月19日、イギリス南西部にある世界遺産の古代巨石遺跡「ストーンヘンジ」で、環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」の2人が大量のオレンジの粉をまき散らす抗議行動を行った。

ジャスト・ストップ・オイルが公開した動画より。6月19日に起こったストーンヘンジでの抗議行動の様子。Photo: Courtesy of Just Stop Oil

イギリス南西部にあるストーンヘンジは、およそ4500年前の先史時代に作られた、世界で最も有名な古代の巨石遺跡だ。同遺跡は、北半球で1年で最も昼が長い夏至に、ヒール・ストーンと呼ばれる高さ6メートルの玄武岩と、中心にある祭壇石を結ぶ直線上に太陽が昇ることが知られており、今年は6月20日の夏至に合わせて数千人が集まると予想されていた。さらに今年は、その翌日の6月21日に、月の出と月の入りの地点が一直線になっている同遺跡で月の出が最南端となり、上空に月が最も長い時間現れる、18.6年に一度の現象「月の大停滞」が起こる

このようにストーンヘンジに大きな注目が集まっていた6月19日、事件は起こった。環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」に所属する21歳のオックスフォード大学の学生ナイアム・リンチと73歳のラジャン・ナイドゥと名乗る2人が、観客からの「やめろ」という声が響く中、ストーンヘンジに大量のオレンジ色の粉をまき散らした。その後すぐに2人の勇敢な観客に制圧され、逮捕された。

今回の抗議行動について、ジャスト・ストップ・オイルは声明で、「7月4日に行われるイギリス総選挙後の次期政権に対し、2030年までに化石燃料を段階的に廃止する法的拘束力のある条約に署名するよう求めるものだ」と述べた。その中でナイドゥは、抗議行動で使用したオレンジ色の粉はコーンスターチだったと明かし、こう主張した。

「私たちが化石燃料の時代を終わらせるか、化石燃料の時代が私たちを終わらせるかのどちらかです。50年前、世界が核兵器による脅威を和らげるために国際条約を利用したように、今日、世界は化石燃料を段階的に廃止し、経済、労働者、地域社会が石油、ガス、石炭から脱却するのを支援するために、化石燃料不拡散条約を必要としています」

「オレンジ色のコーンスターチは、やがて雨とともに流れ去るでしょうが、気候や生態系の危機がもたらす破滅的な結果を緩和するための、効果的な政府による行動の緊急の必要性は無くなりません。私たちが求める条約に署名しましょう」

6月19日にAP通信が報じたところによると、スナク首相はこの抗議行動を「恥ずべき破壊行為」と呼び、総選挙でスナクの対立候補となる労働党の党首キーア・スターマーは、ジャスト・ストップ・オイルを「哀れ」「言語道断」と呼んだ。

今回の抗議行動によって生じた損傷について、ストーンヘンジの管理団体イングリッシュ・ヘリテージは、現在調査中だという。

また、考古学者でストーンヘンジの専門家のマイケル・ピッツはBBCの取材に対し、「ストーンヘンジの表面は先史時代の痕跡に覆われているような状態で、それらはまだ完全に調査されていません。巨石の表面の損傷が非常に気になるところです」とコメントした。(翻訳:編集部)

from ARTnews

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