世界的ギャラリー、アルミン・レッシュがロンドン拠点を閉鎖。ブレグジットとパンデミックが影響か

10月3日、パリをはじめ世界9拠点を運営する有名ギャラリー、アルミン・レッシュロンドン拠点が630万ポンド(約12億5700万円)の負債を抱えて閉鎖した。

アルミン・レッシュのロンドン拠点での最後の展覧会となったグレゴール・ヒルデブラント展の様子。Photo: Courtesy Almine Rech

パリを本拠地とする国際的なギャラリー、アルミン・レッシュが、ロンドン拠点を閉鎖したとアートニュースペーパーが報じた。

アルミン・レッシュは、代表のアルミン・レッシュによって1989年にパリ・マレ地区に最初のギャラリーをオープンし、当時ヨーロッパにディーラーのいなかったジェームズ・タレルの作品を紹介するなど、徐々にその知名度を高めていった。現在はパリに3カ所、ニューヨークに2カ所、ブリュッセル、モナコ、スイスのグスタード、上海に拠点を持つまでに成長している。

同ギャラリーのロンドン拠点は、2014年にサヴィル・ロウで開設され、2年後にグロヴナー・ヒルのガゴシアンの隣に移転。その10余年に渡る歴史の中で、ハビエル・カジェハ、クロエ・ワイズ、ジェフ・クーンズ、エスター・マーラングなど、話題のアーティストの展覧会を開催してきた。

10月3日にアートニュースペーパーの記者メラニー・ガーリスが報じたところによると、アルミン・レッシュのロンドン支店は清算手続きに入ったという。記事の中ではギャラリーが630万ポンド(約12億5700万円)の赤字を抱えていることを示唆する英企業登録局の提出書類も引用されている。ガーリスの取材に対してレッシュは、アーティストや従業員、取引先への未払いはないとしたうえで、清算申請は「今後の計画に合わなくなったリース契約を再編するための技術的な手続きだ」と説明している。

2025年はじめ、レッシュはUS版ARTnewsに対し、イギリスで2024年に行われた税制改革後、富裕層の海外移住が続いてロンドンのコレクターの一部を失ったと語っていた。そして、「一度人々が離れて他の場所に定住すると、通常は戻ってこない。資金がある場所から流出することは良いことではない。だが、イギリスには強い回復力があると信じている」と付け加えた。

ロンドンのギャラリーやオークションハウスは、ブレグジットと新型コロナウイルスのパンデミックの影響に苦しんでおり、レッシュのロンドン拠点もその大きなあおりを受けたと考えられる。だが、2023年には、ロンドンのディーラーの一部はUS版ARTnewsに対し、フランスの市場が存在感を増している一方で、イギリスの美術市場は依然として堅調であるとも語っていた

レッシュはアートニュースペーパーの記事の中で、ロンドンは変わらず「非常に重要」な場所で、「近いうちに(そこに)何かを開く」と語ったが、詳細については明らかにしていない。

ロンドン拠点で開催された最後の展覧会は、7月26日に閉幕したグレゴール・ヒルデブラントの個展だった。なお、アルミン・レッシュのホームページからロンドン拠点の情報はすでに削除されている。(翻訳:編集部)

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