3000円が約5億円に! 正体不明のアーティスト、XCOPYがNFTエディション作品の最高額を更新

2019年に20ドル(現在の為替で約3000円)でリリースされたXCOPYの《Last Selfie》が、327万ドル(約5億円)で売却された。わずか6年で16万倍以上に価値が高騰したこの作品は、NFTアートのエディション作品として史上最高額を記録した。

XCOPY《Last Selfie》(2019) Photo: Courtesy of Jediwolf
XCOPY《Last Selfie》(2019) Photo: Courtesy of Jediwolf

正体不明のアーティストXCOPYによるデジタルアート作品《Last Selfie》(2019)が、327万ドル(約5億円)相当のイーサリアムで個人コレクターに売却された。2019年に10点限定でミントされたこの作品は、NFTアートのエディション作品としては史上最高額の取引記録を更新したことになる。

ロンドンを拠点に活動するXCOPYの作品にはグリッチ効果が用いられており、ディストピア的、あるいは思索的な表現が特徴だ。点滅や歪みが施されたループ映像を通じて、死や腐敗、虚無といったテーマを扱う作風は、コレクターから人気を博している。

この作品は当初20ドル(現在の為替で約3000円)で販売されたが、その後価値が高騰。2025年5月の取引では120万ドル(同約1億8300万円)の値がついた。そして今回、仲介者を介した交渉の結果、それをさらに大きく上回る327万ドルで売却された。エディション所有者10人のうち9人が売却を断ったとされ、最終的に1人が応じたという。

売り手と買い手の身元は明らかになっていないが、本作のエディションを所有するコレクターには、著名NFTコレクターのCozomo de’ MediciやPunk6529、そして金融教育プラットフォーム、Real Vision創業者兼CEOのラウール・パルが含まれる。

AIアートコレクターのJediwolfは、買い手のオファーを断ったコレクターの1人だ。彼はUS版ARTnewsの取材に、「3年前になんとか《Last Selfie》を入手して以来、作品の意味について考えてきました」と語り、こう続ける。

「一見すると暗さの中にユーモアがある風刺画に見えますが、私はそれ以上の意味を感じています。《Last Selfie》は、時間こそが私たちが実際に有する唯一の富なのだと問いかけているのではないでしょうか。この作品を見るたび、時間について私は考えてしまいます」

デジタルアート・アドバイザーでデジタルアートに特化したフェア「Digital Art Mile」を創設したゲオルグ・バックは、《Last Selfie》についてこう語る。

「《Last Selfie》は、《Right-click and Save As guy》(2018)と並んでNFTアートを象徴する作品だと言えるでしょう。本作はPunk 6529が運営するデジタルミュージアム『6529 MUSEUM OF ART』に収蔵されており、文化的にも高い重要性があります。こうした背景から、NFTアートのエディション作品として最高取引額を更新したことに何の驚きもありません。近い将来には、クリプトパンクス(CryptoPunks)の中でも希少なAlienPunksやビープルの作品、あるいはXCOPYの一点物の作品が、5000万ドル(約76億円)以上の価格で取引されることでしょう。100ドル未満(約1万5000円)で購入できた2018年に彼の作品を入手しなかったことが悔やまれます」

なお、エディションシリーズ全体の売上としては、2021年に売却されたデジタルアーティスト、Pakの《The Merge》が9180万ドル(当時の為替で約104億円)で最高額を記録している。本作はNFTマーケットプレイスのNifty Gatewayで売却され、当時、同社の共同創業者であるダンカン・コック・フォスターは次のように述べている。

「これはNFTアートにとって忘れられない瞬間となりました。高額取引されたことによって、ブロックチェーン技術を通じてのみ結びつけられるアートと技術革新の媒体として、NFTが認められたことを示しています」(翻訳:編集部)

from ARTnews

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