皇帝コンモドゥス暗殺未遂の舞台、コロッセオ「秘密の通路」が初公開へ。目的地は依然不明

コロッセオには、ローマ皇帝たちが民衆と交わることなく競技場に入るためにつくられた「秘密の通路」がある。コロッセオ考古学公園は、この通路の改修工事が完了し、10月27日より初めて一般公開することを発表した。

ローマにある世界遺産コロッセオ。Photo: Wikimedia Commons

ローマのコロッセオ考古学公園は、当時の皇帝たちが闘技場の試合を見下ろす専用観覧席に入るために使った秘密の通路を10月27日に一般公開すると発表した。

この通路は、80年ごろのコロッセオ完成後に追加されたもので、1世紀末から2世紀初頭の間に闘技場の南側の基礎部分を貫いて造られた。その後、行方は分からないままとなったが1810年代に再発見され、秘密の通路にゆかりのある残忍で無能な皇帝コンモドゥス(在位期間180-192年)にちなんで「コンモドゥス通路」と名付けられた。コンモドゥスはリドリー・スコット監督の映画『グラディエーター』(2000)でホアキン・フェニックスが演じたことで有名になった人物で、剣闘士の戦いに情熱を注いでいた。史実によれば、彼はこの回廊を通過中に暗殺未遂に遭ったという。最終的には192年、彼の重臣たちが剣闘士ナルキッソスに彼を絞殺させた。

コロッセオで公開される、皇帝の秘密の通路。Photo: Face book/Parco archeologico del Colosseo
コロッセオで公開される、皇帝の秘密の通路。Photo: Face book/Parco archeologico del Colosseo
コロッセオで公開される、皇帝の秘密の通路。Photo: Face book/Parco archeologico del Colosseo
コロッセオで公開される、皇帝の秘密の通路。Photo: Face book/Parco archeologico del Colosseo

S字型の通路は元々大理石で覆われており、壁には石板を支えていた金属製のクランプの痕跡が今も残っている。ヴォールト(アーチを並行に押し出したかまぼこ状の天井)には、酒神ディオニュソスが、アテナイの王テセウスに見捨てられたクレタの王女アリアドネと、ナクソス島で恋に落ちる神話の場面が描かれていた。また、通路の入口にある壁に作られたくぼみ「壁龕」には、猪狩り、熊との戦い、曲芸など皇帝がコロッセオで目にする可能性のある場面が描かれていた。通路はコロッセオの競技場外へと続いていたが、その最終目的地は依然として不明だ。

コロッセオ考古学公園は、2024年10月から2025年9月にかけて通路の改修工事を行った。このプロジェクトには、構造保全、装飾要素の修復、そして観光客用の通路の設置が含まれていた。だが、通路は湿気の多い環境によって劣化しており保存修復作業は困難を極めた。これを補うために、研究者たちはコンモドゥス通路のバーチャル再現を作成したという。また、ヴォールトの小さな開口部から通路に光が入っていた当時の状況を再現するため、新しい照明システムが設置された。

秘密の通路の公開について、コロッセオ考古学公園は声明の中で、「極めて重要な意義を持ちます。魅力的な歴史、建築、そして芸術を持つ皇帝の専用として設計された場所が、初めて一般に公開されるのです」と述べている。2026年初頭に開始予定の修復プロジェクト第2段階では、コロッセオの外へと延びる通路の調査を行う予定だ。

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