イヴ・クライン、夭逝前年の大作が約33億円で落札。フランスでの最高額を更新
イヴ・クラインが、その代名詞である青の顔料「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」を用いて制作した最大級の作品が、パリのクリスティーズで行われたイブニングセールに出品された。落札価格1840万ユーロ(約32億7000万円)は、フランスにおけるクラインのオークション新記録だ。

10月23日に行われたクリスティーズ・パリのイブニングセール「Avant-Garde(s) Including Thinking Italian」で、目玉作品として出品されたイヴ・クラインの幅約4.3メートルの大作《カリフォルニア(IKB 71)》が、1840万ユーロ(約32億7000万円)で落札された。予想落札価格は、1600万ユーロから2500万ユーロ(約28億5000万円~約44億5000万円)だった。
US版ARTnewsが9月末に報じたように、インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)による絵画のほとんどは無題で発表されている。今回の出品作は、タイトルが付けられた数少ない作品の1つで、1961年に制作されたすぐ後に展示されたアメリカの州名に因んで名付けられた希少なものだ。
フランスのニース生まれでパリを拠点に活動していたクラインが、アメリカを訪れたのはたった一度きり。それは長年の支援者で、ロサンゼルスの伝説的な画廊経営者だったヴァージニア・ドワンに会い、ドワンのギャラリーで展示を行うためだった。
しかし、最近クリスティーズとイヴ・クライン財団が今回の出品作の来歴を調べたところ、新事実が明らかになった。それは、パリからカリフォルニアへ向かう途中、同作がニューヨークのレオ・カステリ・ギャラリーでも展示されていたことだ。
渡米翌年の1962年、クラインは心臓発作でわずか34年の生涯を閉じている。疾風のように駆け抜けた作家人生だった。
《カリフォルニア(IKB 71)》は、スイスのコレクター、ジョージ・マーシーが所有したのち、2005年以降はペース・ギャラリーを通じてこの絵を取得したニューヨークの個人コレクションに収められていた。2005年から2008年までメトロポリタン美術館に長期貸し出しされたのが、一般公開としては最後の展示となっている。
9月末の取材時点でクリスティーズは出品者についてのコメントを控えたが、同作に詳しい美術界関係者がUS版ARTnewsに明かしたところによると、ユナイテッド・テクノロジーズ社(UTC)の元会長、ジョージ・デイヴィッドによる出品だという。UTCは過去にメトロポリタン美術館で、ゴッホやジャスパー・ジョーンズなどの展覧会を支援している。なお、デイヴィッドはUS版ARTnewsによるコメントの求めに応じていない。(翻訳:石井佳子)
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