テート・モダン館長のフランシス・モリスが来年4月に退任。アート業界のジェンダーギャップ是正や収蔵作品のグローバル化を牽引
世界的に有名なロンドンの現代美術館、テート・モダンのフランシス・モリス館長が2023年4月末日で退任することが明らかになった。アートレビュー誌が第一報を伝えた。
モリスは過去20年余にわたり、同美術館の展示や国際的コレクション収集の責任者などを歴任。16年にテート・モダン初の女性館長に就任している。
ケンブリッジ大学とロンドン大学のコートールド・インスティテュート・オブ・アートで学位を取得したモリスは、ブリストルのアーノルフィニ・ギャラリーでの経験を経て、1987年にテートのキュレーターになった。また、これまで英国のさまざまな美術館グループのアドバイザーを務めている。
モリスはARTnewsへの声明でこう語った。「テートに入って35年経ちますが、これまで内部からの変革を続けてきたこの美術館に育ててもらい、とても恵まれていました。また、この間、英国だけでなく世界の現代アートシーンは驚くほどの成長を遂げています。それに貢献できたことをうれしく思います」
16年の館長就任前から、モリスはコレクションのグローバル化に向け主導的な役割を果たしてきた。特に、アジア太平洋地域や中東のアーティストによる作品の取得を積極的に進めている。また、ルイーズ・ブルジョワ、草間彌生、アグネス・マーティンなど女性作家の大規模個展や回顧展を企画するなど、美術館における男女格差の問題に取り組む上で欠かせない存在でもある。
モリスはまた、こう述べている。「美術館に大勢の来場者が戻りつつあります。今は楽しく出かけたい気分になる時ですね」
なお、テート・モダンの広報担当者からは、今のところモリスの後任に関するコメントはない。
テートの会長兼館長(*1)のマリア・バルショーは声明で、モリスは「非常に重要な存在」であるとし、「女性アーティストの支援、コレクションの拡大における国際化推進、そして2000年の新しいテート・モダンの斬新なオープニングなど、過去35年間にわたって彼女が積み重ねてきた貢献の大きさは計り知れない」と称えている。(翻訳:石井佳子)
*1 テート(2000年の改組以前の名称はテート・ギャラリー)は、近現代美術コレクションを所蔵・管理する組織で、ロンドンその他に複数の美術館を持つ。テート・モダンはその1つ。
*from ARTnews