マト・ペリッチ(Mato Perić)
拠点:ドイツ・ハンブルク、イギリス・ロンドン、クロアチア・シベニク
職業:IT起業家
収集分野:現代アート
マト・ペリッチは、ヨーロッパ、インド、ブラジル、シンガポール、アラブ首長国連邦な35カ国で、さまざまなテクノロジー関連企業に50億ドル(約7200億円)以上の投資を行う起業家だ。彼はハンブルク大学で経営学を学んだ後、ロンドン・ビジネス・スクールで経営学修士号を取得。現在もロンドンとハンブルク、そして1970年代に一家でドイツに移住するまで暮らしていたクロアチアのシベニクを拠点としている。
アートコレクターでありパトロンでもあるペリッチは、2022年のヴェネツィア・ビエンナーレのクロアチア館を支援した。クンスターレ・バーゼルのディレクター兼チーフ・キュレーター、エレナ・フィリポヴィッチがキュレーションを担当したクロアチア館は、トモ・サヴィッチ=ゲカンによるパフォーマンスを毎日異なる時間と場所で行った。他国のパビリオンを一時的に間借りすることもあるこのプロジェクトのパフォーマーが、どこでいつ出没するかは、毎朝インスタグラムで発表された。「このプロジェクトは、現代社会における監視、ニュースメディアの存在、あいまいになる国境について語っていると感じました」と、ペリッチはUS版ARTnewsのメールインタビューに答えている。彼はまた、ロンドンのチゼンヘール・ギャラリーやCCAベルリンの支援も行なっている。
ペリッチは、コーリー・アルカンヘル、コジマ・フォン・ボニン、ヤナ・オイラー、ジャクリーン・ハンフリーズ、デンジル・フォレスター、ルイーズ・ローラー、トビアス・スピヒティグ、そして2002年に飛行機事故のため35歳の若さで亡くなった故ミシェル・マジェルスなどの作品を所有している。そのマジェルスのアメリカ初の回顧展が、2022年のアートバーゼル・マイアミ・ビーチのオープニングに合わせ、ICAマイアミで開催されている。
ペリッチのコレクションは、新進作家や評価の高い中堅作家、「絵画をめぐるパラダイムを変化させ続ける先駆的な世代の」女性アーティストに重点を置き、さらに彼が「ポピュラーなコンセプチュアル」と呼ぶ作品に焦点を当てている。それは、「アートの歴史を出発点としながら大衆文化の視野を持ち、鑑賞者に様々なレベルで刺激を与えることのできる」アーティストの作品だ。彼は自分自身を「単に所有作品を増やし続けるだけのコレクター」とは思っていないと言う。「初めてアートを手に入れたときに考えたのは、何か意味のあるものを築き、永続的でポジティブなインパクトを与えたいということだった。コレクションをすることで、インパクトを与えるための幅広い選択肢を得ることができる」
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。