「重すぎる判決」──ドガの彫刻を汚した環境活動家に懲役18カ月
ナショナル・ギャラリーに展示されているエドガー・ドガの彫刻作品に塗料を塗りつけた活動家に18カ月の懲役刑が言い渡された。懲役刑に加えて、塗料の清掃作業を含む社会奉仕活動も行わなければならない。
ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに展示されているエドガー・ドガの彫刻《Little Dancer Aged Fourteen》の台座とケースに塗料を塗りつけた環境活動家、ティモシー・マーティンが10月下旬に懲役18カ月の判決を受けた。マーティンには今年の4月、合衆国に対する共謀罪と器物損壊罪で有罪判決が下されている。
懲役18カ月には、有罪判決後から現在に至る服役期間が算入される。また、懲役刑のほかに4062ドル(約62万円)の賠償金と200ドル(約3万円)の手数料の支払いと、150時間の社会奉仕活動が命じられた。奉仕活動のうちの20時間は、塗料の清掃作業にあてる必要があるという。
環境保護団体「Declare Emergency」に所属するマーティンは、同じく活動家のジョアンナ・スミスとともにドガの彫刻に塗料を塗りつけた。有罪判決が言い渡される前にマーティンは、ニュース・アンド・オブザーバー紙に次のように語った。
「この抗議活動は、人々の目を覚まし、成長と行動を促すという使命感のもとで実施しました。私たちは、アメリカという帝国が作り出した幻想のなかで生かされています。この行動は、何者かによって奪われ、打ちのめされてしまった良心からの呼びかけなのです」
司法省によると、マーティンとスミスによる行為の損害は4000ドル(約61万円)以上で、作品が展示されていた部屋は修復のため10日間閉鎖された。検察は当初、マーティンに対して懲役5年を求刑していた。なお、スミスは2023年に有罪を認め、60日間服役したのちに、7000ドル以上(現在の為替で約107万円)の賠償金と罰金を支払っている。また、ふたりはワシントンD.C.および同市の美術館と記念碑への立ち入りを禁じられている。
今回マーティンに下された判決に対して、環境保護団体の「Climate Rights International」は、次のような声明を発表した。
「環境活動家のティモシー・マーティンがナショナル・ギャラリーで実施した抗議活動はいたって平和的でした。それに対して18カ月の懲役刑は不釣り合いな判決と言わざるをえません。アメリカは、言論の自由と平和的集会という基本的権利を踏みにじっています」
(翻訳:編集部)
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