トランプ政権の新関税、骨董・装飾美術品の国際取引に打撃。「アンティーク蒐集家には大きな衝撃」

トランプ大統領が9月29日に署名し、10月14日に発効した新たな関税が、骨董品や装飾美術品の国際取引に打撃を与えていると報じられた。

2025年6月3日、ワシントンDCの米国農務省(USDA)の建物の外に掲げられた、ドナルド・トランプ大統領の横断幕。Photo: Kevin Carter/Getty Images

トランプ政権によって10月14日に発効された関税が骨董品や装飾美術品の国際取引に打撃を与えている。

これまで、アメリカに輸入される木材、ラミネート材、布張り家具、キッチンキャビネットなどの製品には、免税または極めて低い税率が適用されていた。しかし、トランプ政権は国内製造業者の支援を目的として、これらの輸入品に追加関税を課すことを決定した。

10月14日以降は、木材・ラミネート材は10パーセントが課された。ソファや椅子などの布張り家具、キッチンキャビネット、洗面化粧台については25パーセントとなった上に、各国との交渉がまとまらなければ、2026年1月1日以降は布張り家具は30パーセント、キッチンキャビネット、洗面化粧台は50パーセントへと引き上げられる。日本とEUは、関税交渉での合意に基づき、15パーセントの上限が適用される。

絵画、彫刻などの美術作品については、1977年の国際緊急経済権限法の下で関税対象から除外されている一方で、時計、ワイン、工芸品、家具、クラシックカーなどの多くの収集品や高級品はこのような保護を受けていない。

この関税のあおりを受けているのが、骨董・装飾美術品業界だ。テネシー州メンフィスを拠点とするアメリカ・ヨーロッパの骨董家具商であるミリセント・フォード・クリーチはアートニュースペーパーの取材に対して、イケア製品への課税は妥当かもしれないと指摘。そして、こう続けた。

「目的が(家具製造が盛んな)ノースカロライナ州の製造業者を支援することだというのは理解しています。ですが、私の顧客の大多数は1770年以前の骨董品が好きで、1800年以前の家具を求めています。関税に完全な衝撃を受けています」

関税発効以前に注文した商品でも、10月14日以降にアメリカへ到着した場合には関税が徴収されるが、現状では、その負担を企業が肩代わりするケースが多い。さらに、国ごとの関税の条件が異なる上に関税率が変動し続けているため、輸入コストの予測が難しい状況が続いている。ニューヨークを拠点とする骨董品商マイケル・パシュビーも、アートニュースペーパーの取材に次のように話している。

「今、イギリスの運送業者に『ニューヨークまでの配送費用はいくらになるのか』と尋ねると、彼は分からないと答えるんです。出港時とアメリカ到着時で料金が異なる可能性があるからです」

こういった関税にまつわる不安定な状況への対処法について、運送業者のコンベリオのような多くの企業がガイドラインを提供している

関税全体の影響はまだ見通せないが、トランプ政権時に設けられた関税は、大統領が国際緊急経済権限法の下で認められた権限を逸脱しているとして訴訟が起こされている。米国最高裁判所は11月5日、12の民主党主導の州と2つの民間企業グループによる訴訟を審理した。判決は後日言い渡される(翻訳:編集部)

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