今秋のオークションシーズンは市場の転換点となるか。サザビーズCEOは「供給の改善」を評価

秋の主要オークションウィークを迎えるニューヨークで、アート市場にポジティブな変化が見られるとサザビーズのチャールズ・スチュワートCEOがコメントした。同社は今秋、約2200億円の売り上げを見込んでいる。

サザビーズの新グローバル本社が置かれたブロイヤービルのロビーに立つ同社CEOのチャールズ・F・スチュワート。Photo: Stefan Ruiz Courtesy of Sotheby’s

サザビーズのチャールズ・スチュワートCEOは最近、米CNBCの取材に応じ、この秋アート市場が新たな段階に入ったとの見解を明らかにした。このところオークションでは好調な入札が続いていたが、ようやく売り手からの供給が「需要に追いついた」という。

同社は今秋、14億ドル(最近の為替レートで約2200億円、以下同)の売上総額を見込んでいる。これは前年同期を大幅に上回る約50%増で、3年連続の減少から抜け出す転換点となる可能性がある。11月のオークションにおける売り手と買い手双方の動向が、今後より広範な面で回復を持続できるかどうかの試金石となるだろう。

ニューヨークのサザビーズで秋に行われるセールの目玉は故レナード・ローダーのコレクションで、出品される55点の総額は4億ドル(約616億円)を超えると予想されている。そのうちグスタフ・クリムトの《エリザベート・レーデラーの肖像》は予想落札価格が1億5000万ドル(約231億円)以上、クリムトの風景画2点はそれぞれ7000万ドル(約108億円)以上、8000万ドル(123億円)以上と見積もられている。また、アンリ・マティスのブロンズ彫刻6点とエドヴァルド・ムンクの《Sankthansnatt(真夏の夜)》も出品予定だ。

さらに、ジェイ・プリツカーとシンディ・プリツカー夫妻が遺したコレクションの売上総額は1億2000万ドル(約185億円)になると見られ、その中には予想落札額が4000万ドル(約62億円)を超えるフィンセント・ファン・ゴッホの静物画も含まれている。

一方、クリスティーズの目玉作品はクロード・モネの《睡蓮》、デイヴィッド・ホックニーの《Christopher Isherwood and Don Bachardy(クリストファー・イシャーウッドとドン・バチャーディ)》などで、それぞれ4000万ドルから6000万ドル(約62億〜92億円)の予想落札額が付けられているほか、マーク・ロスコの作品も5000万ドル(約77億円)以上での落札が見込まれている。

複数のアートアドバイザーによると、作品自体に希少価値があることに加え、マクロ経済環境の堅調さ(利下げや上昇トレンドの株式市場を背景とした最近の資産価値増加)が売り手をオークションに呼び戻す一助となったという。スチュワートCEOはCNBCにこう答えている。

「最近は目立って供給が需要に追いついてきました。ここ2カ月で明らかに変化が起きています」

11月初旬、マディソン・アベニューにあるブルータリズムの名建築、ブロイヤー・ビルディングで新しいグローバル本社をオープンしたサザビーズは、その勢いに乗ってオークションウィークを迎える。オープン以来、新本社に1万人以上の来場者が訪れていることについてスチュワートは、移転効果が出品者の間にも出ているとした。

しかし、高額作品の動きは依然停滞気味だ。バンク・オブ・アメリカ プライベートバンクの報告書によると、2025年上半期の1000万ドル(約15億4000万円)を超える作品の取引件数は前年同期比で44%減、コロナ禍後のピークだった2022年上半期の72%減にとどまった。また、今年上半期に5000万ドル(約77億円)を超えたロットは皆無だったが、2022年の同時期にはこの水準のものが13件あった。

これとは対照的に、低価格帯では好調さが続いている。年間売上高25万ドル(約3900万円)未満のディーラーで昨年の販売額が17%増になった一方、1000万ドル(約15億4000万円)超のディーラーでは9%減だった。

今週のセールが、回復が本物であることを裏付けるのか、一時的な調整に過ぎないのかはさておき、動きの鈍い高価格帯市場と活況を呈する低価格帯市場の乖離は、次の成長局面がこれまでとは大きく異なるものになる可能性を示唆している。しかし、オークションの好調さが続いたとしても、今シーズン全体を覆う根本的な疑問は依然残るだろう。すなわち、市場の未来はステータスシンボルとしての高額作品を狙うメガコレクターのものか、それとも需要の構造を根本から変えつつある新たなコレクター層のものか、という疑問だ。(翻訳:石井佳子)

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