古代「老人の顔」彫像が、鉄道の工事現場から出土。マヤ先古典期の儀式用建造物の目印か

メキシコのユカタン半島で、約2000年前のものと見られる石灰岩でできた頭部の彫像が発見された。マヤ文明の先古典期(紀元前2500年〜紀元後200年頃)に、儀式が行われた建物の目印として置かれていたと見られる。

マヤ文明先古典期のものと推定されている石灰岩の頭部の彫刻。Photo: Courtesy National Institute of Anthropology and History, Mexico

メキシコ・ユカタン半島に点在する観光資源を結ぶマヤ鉄道(Tren Maya)の建設プロジェクトは、2020年に着工し、2024年12月に全線開通した。総延長1500キロを超える工事では、これまで数多くの考古学的遺物や遺跡が発見されている。しかし、鉄道敷設をめぐっては生態系や文化遺産への影響を懸念する声もあり、地域住民の間でも賛否が分かれている。

アートネット・ニュースが伝えたところによると、今回、約2000年前にさかのぼる石灰岩の頭部彫刻が見つかったのは、ユカタン半島北部、ユカタン州の州都メリダ近郊にあるシエラ・パパカルだ。同地では、マヤ鉄道の貨物路線の一部に位置付けられているメリダ−プログレソ間のバイパス工事が行われていた。

マヤ鉄道プロジェクトを考古学的側面から監督しているメキシコの国立人類学歴史研究所(INAH)が11月10日に発表した声明によると、高さ約45センチメートルの頭部は「くぼんだ眼窩、平たい鼻、くっきりとした唇と顎」といった特徴から、「年を取った男性」だと推測される。

発見された場所は5.8×4.3メートルの楕円形をした建造物の遺構のそばで、この建造物の入口が日の沈む西向きに設けられていたことから、マヤ文明先古典期の儀式的な集会に使用されていたものと考えられている。INAHの声明はこの点を次のように説明している。

「これは偶然ここに置かれたのではなく、建物の目印、または入口を示すものとして意図的に配置されています。建物に入る人々から敬意をもって扱われていたであろうことは、この空間が日常生活の場ではなかったことを示しています」

INAHのメンバーは、この遺構が見つかった周囲約1.6キロ圏にある15の建造物で発掘・記録作業を進めている。頭部の彫刻は他の遺物とともにプロジェクトの研究所へ送られ、保存処理と分析が行われる。(翻訳:石井佳子)

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