3500年前の大規模遺跡がカザフスタン「7つの渓谷の都」で出土。青銅器生産地として注目すべき発見

3500年以上前に青銅器生産の中心地だったと見られる大規模な集落が、カザフスタンの草原地帯で見つかった。考古学研究者たちは、ここ数十年で最も注目すべき発見だとしている。

ドローンで空撮したセミヤルカの遺跡(2018年7月撮影)。Photo: Peter J. Brown

カザフスタン北東部に位置するセミヤルカで、後期青銅器時代にあたる紀元前1600年頃の古代遺跡が発掘された。CBSニュースによると、イギリス・ダラム大学の学術誌『Antiquity(アンティクィティ)』で11月18日に発表された報告書は、ダラム大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)、カザフスタンのトライギロフ大学の考古学研究者8人のグループが執筆している。

発見されたのは140ヘクタールに及ぶ広大な集落で、この地域に現存する同種の遺跡としては最大規模のものだ。トライギロフ大学の研究者によって2000年代初頭に初めて確認され、長方形の土塁や後期青銅器時代の陶器、金属器などの痕跡が見つかったものの、本格的な調査が行われたのは今回が初めて。紀元前1600年頃にさかのぼるこの遺跡は、周辺の遊牧民コミュニティが定住型の都市化集落へと移行し始めた重要な歴史的時期を解明する手がかりになる。

報告書の執筆者の1人で、UCLの考古学教授であるミリヤナ・ラディヴォイェヴィッチは、同大学ウェブサイトのニュースページに掲載された記事で、その成果を次のように語っている。

「これは、セミヤルカ周辺の地域におけるここ数十年で最も注目すべき考古学的発見の1つです。セミヤルカは草原地帯の社会に対する私たちの見方を変えるでしょう。今回発掘されたものは、遊牧民の共同体が、おそらく大規模な産業を中心とした恒久的で組織的な定住地を築き、維持できたことを示しています。まさに草原の『都市的拠点』と言えるものです」

セミヤルカはカザフ・ステップと呼ばれる草原地帯にある。イルティシュ川が流れ、ロシアへと続くこの地域は「7つの渓谷の都」とも呼ばれ、ラディヴォイェヴィッチらの報告書では、錫青銅生産の主要拠点であった可能性が高いと見られている。同報告書ではまた、「今回の発見は、セミヤルカが高度に組織化された冶金の中心地として複雑な生産システムを運営していた可能性を示しており、半遊牧的な草原社会には構造化された金属経済が存在しなかったという従来の説に疑問を投げかけるもの」とされている。

研究グループは、セミヤルカで金属器がどのように生産され、近隣の他の共同体と交易を行っていたかについて今後も研究を続ける考えだ。(翻訳:石井佳子)

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