ルノワールが幼い息子ジャンを描いた「秘蔵の傑作」、オークションに初登場。3億2500万円で落札

オーギュスト・ルノワールが幼い息子と乳母を描いた未公開の油彩《子どもとそのおもちゃ―ガブリエルと画家の息子ジャン》が11月25日、パリの公共競売所ドルオーで行われた近代絵画セールに出品され、180万ユーロ(約3億2500万円)で落札された。

オーギュスト・ルノワール《子どもとそのおもちゃ―ガブリエルと画家の息子ジャン》(1910)Photo: Public domain

オーギュスト・ルノワールが幼い息子と乳母を描いた未公開の油彩《子どもとそのおもちゃ―ガブリエルと画家の息子ジャン》が11月25日、パリの公共競売所ドルオーでオークションにかけられ、180万ユーロ(約3億2500万円)で落札された。

1910年頃に制作された同作は、ルノワールの幼い息子ジャンが乳母のガブリエルと遊ぶ様子を温かな雰囲気で描いたもので、これまで一度も公開されたことがなかった。保存状態は驚くほど良好で、オークション出品時に修復を必要としなかったという。今回の出品はジョロン=デレム社によるもので、予想落札価格100万〜150万ユーロ(約1億8000万〜2億7000万円)を大きく上回った。アートネットによると、国際的なコレクターが手数料込みで180万ユーロ(約3億2500万円)で落札した。

この絵画が長年公の目に触れなかったのは、ルノワールの弟子であり友人で、1895年生まれのジャンの名付け親でもあったジャンヌ・ボドに贈られた私的な作品だったためだ。ボドは亡くなるまでこの絵を手元に置き続け、のちに養子で相続人のジャン・グリオが受け継いだ。グリオは2011年に亡くなるまで、この絵を自室に掛けていたという。

ルノワールは1895〜96年頃にも、ガブリエルと幼いジャンを描いた同作に近い習作を複数制作しており、そのうちの1点は現在パリのオランジュリー美術館に収蔵されている。もう1点はかつてグリオの所蔵品だったが、1985年にワシントン・ナショナル・ギャラリーが取得した。アートネットは、これら既知の2点と比較して、今回の作品はより色彩豊かで細部が明確に描かれていると評価している。

同作に登場する乳母ガブリエル・ルナールは、ルノワールの妻に雇われてから20年以上にわたり、夫妻の3人の息子の乳母を務めた。彼女は同時にルノワールのお気に入りのモデルでもあり、約200点の作品に描かれている。

ジャンは後にアカデミー賞を受賞する映画監督となり、1979年に死去した。彼は過去のインタビューで、父ルノワールのモデルを務めた時の様子をこう振り返っている。

「とても小さく、3歳か4歳、5歳くらいの頃でした。彼はわざわざポーズをとらせるのではなく、私が何かに夢中になって静かにしているタイミングを利用していたのです」(翻訳:編集部)

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