2026年ホイットニー・ビエンナーレには56作家が参加。「関係性」をテーマにアメリカ美術を俯瞰

2026年3月に開幕する第82回ホイットニー・ビエンナーレの参加アーティスト56人が発表された。本展は、家族や技術がもたらすつながりや、それらを支える社会の仕組みなど、多様な関係性を通じてアメリカ美術のいまを提示する展覧会になるという。

2026年ホイットニー・ビエンナーレのキュレーターに決定したドリュー・ソーヤー(左)とマルセラ・ゲレロ。Photo: Bryan Derballa
2026年ホイットニー・ビエンナーレのキュレーターに決定したドリュー・ソーヤー(左)とマルセラ・ゲレロ。Photo: Bryan Derballa

2026年3月8日に開幕する第82回ホイットニー・ビエンナーレに参加するアーティスト56人が発表された。マルセラ・ゲレロとドリュー・ソーヤーがキュレーションを務める本ビエンナーレは、「種を超えたつながり、家族関係、地政学的なもつれ、テクノロジーを介して生まれる関係、共有される物語、社会を支える構造など、さまざまな形の関係性」を探るという。

選出されたアーティストには、パレスチナとニューヨークに拠点を置くアーティスト・デュオ、バゼル・アッバス&ルアン・アブ=ラーメ、イラン系アーティストのカムルーズ・アラム(Kamrooz Aram)ジョシュア・シタレッラ(Joshua Citarella)、ドイツを拠点に活動するベトナム人アーティストのソン・テウ(Sung Tieu)などが名を連ねる。また、参加アーティストの大半は45歳未満のミレニアル世代で、およそ3分の1がクィアを自認、多くがニューヨークやカリフォルニアを拠点に活動している。

キュレーターたちは参加アーティストを選ぶため、1年をかけて世界中の300以上のスタジオを訪問し、厳選したという。また、選ばれたアーティストの一部は、ニューヨークであまり展示されてこなかったといい、ソーヤーは、「(今回のビエンナーレは)美術業界人にとっても新たな発見があるだろう」とニューヨーク・タイムズ紙の取材に語った

アメリカで最も長く続くこの芸術祭について、ゲレロは、親族関係や社会の構造を問い直すと同時に、アーティストたちが世界とどのようにつながり、あるいは距離を取るのかに焦点を当てたいと語る。本ビエンナーレは、世界情勢のなかでアメリカが果たしてきた役割についても、来場者に再考を促すものになるという。

ホイットニー・ビエンナーレの公式サイトでは、本展を「深い変革の時代によって形作られた現代アメリカ美術のいまを捉えた、活力にあふれる展覧会」と位置づけている。ここでは、現代の生活に対する決定的な答えを提示するのではなく、空気感や手触りを重視し、緊張感や優しさ、ユーモア、不安を喚起する環境へと来場者を招き入れる。また、選出された作品群は、複雑な現代社会を映し出し、型破りで想像を超えた共存の形を提案するものだという。

ホイットニー美術館館長のスコット・ロスコフは、今回選ばれたアーティストたちについて次のように評価している。

「2人が選んだアーティストは、私たちが生きる奇妙な時代を簡単な答えに落とし込もうとはしていません。来場者は、アーティストたちが感じ取っている世界、つまりは構造的に不安定で緊張感をはらみながらも、希望に満ちた世界に出会えることでしょう」

ゲレロはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、本ビエンナーレでは参加アーティストたちの制作や生活の背景にも光を当てたいと語っている。また、アメリカ美術、ひいてはアメリカという概念そのものを拡張する試みだったとして、「通常の業務では得がたい経験だった」と付け加えた。

ヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタと並び、ホイットニー・ビエンナーレはアート界で重要な芸術祭のひとつに位置付けられている。ただし、このビエンナーレは国際展とは異なり、開催時点におけるアメリカ美術の全体像を提示するという明確な使命を担ってきた。ホイットニー美術館の全展示室を用いて開催される第82回展は、2026年8月まで続く予定だ。(翻訳:編集部)

参加アーティスト一覧

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