レクサスのEVはアートなのか? 「Electrified Sport」が生まれた背景を探る
今年のスーパーボウルは、EV (電気自動車)の広告が印象的だった。EV、つまりグリーン・エネルギー・カーと呼ばれる車がどのように設計されているのか、現在ICAマイアミの中庭に展示されているインスタレーションからその謎を解く。
レクサスとマイアミ現代美術館(ICAマイアミ)がコラボレーションして、レクサスが2021年に発表した電気自動車「Electrified Sport」のコンセプトやデザインを厳密に再現するインスタレーションを制作した。手がけたのは、建築家スーチ・レディだ。
その作品《Shaped By Air》は、ICAマイアミの中庭に展示されている。緑色の曲面パネルは熱帯雨林を抽象化しており、滑らかなフォルムの銀色のオブジェが、パネルの間を縫うように配置されている。オブジェは明らかに車の形なのだが、抽象的な彫刻のようにも見える。
ICAマイアミでのパネルディスカッションでレディは作品制作について、「車は堅牢な物質ではなく、本質的にはかないものであると表現したい」とそのコンセプトについて言及。絶えずスタジオで実験を繰り返したという彼女はこう続ける。
「光と影は常に頭の片隅にあります。スタジオでは、制作中の金属のオブジェに強さを変えながら光を当てたり、その影を壁に投影したりしました」
レディはレクサスのデザインスタジオも訪れたという。「まるで秘密の研究所のようでした。コンセプトカーやそのプロセスを見ることができ、とても光栄でした。デザイナーのアレックス・シェンに話を聞きましたが、空気で動くクルマ、空気力学に基づいたクルマを作ろうというのが、彼らのデザイン指針でした」
設計が完了し、制作の過程でレディは、独自に木型から作り上げた金型を用いて彫刻を完成させていった。両面槌で金属を叩いて形を作り、銅で形を整え、革で仕上げることで、徐々に命が吹き込まれていった。
レディがこの制作工程に魅力を感じたのは、彫刻の手触りだ。さらにレクサスの「空気によって形作られる」というモットーに応えるべく、彫刻には蒸気を発生させ、彫刻を霞のように優しく覆う仕掛けを作った。
これは彫刻の生命の始まりに過ぎないとレディはいう。「私たちが気に入っているのは、作品が持ち運びしやすい点です。世界各地での展示がどんなインスピレーションを与えてくれるのか、とても楽しみです」
この彫刻は、マイアミで2週間ほど展示される予定。(翻訳:編集部)
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