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ノートルダム大聖堂の火災から逃れた傑作の展示が決定。完成時と同じ姿に「奇跡的な早さ」で修復

ノートルダム大聖堂の火災から逃れた宗教画《Mays》を集めた展覧会が、フランスの国家機関モビリエ・ナショナルによって開催される。17〜18世紀にかけてノートルダム大聖堂に献上された一連の傑作には甚大な被害は及んでおらず、想定以上に早く修復が済んだと、モビリエ・ナショナルのディレクターは語っている。

ノートルダム大聖堂に収蔵されているオーバン・ブエの作品《Le Centurion Corneille aux pieds de Saint Pierre》(1639) Photo: davidbordes.com/©DRAC ile-de-France/Photographie David Bordes

家具の修復や保管を担うフランスの国家機関、モビリエ・ナショナルによって、2019年に起きたノートルダム大聖堂の火災による損傷から修復された傑作を集めた展覧会が開催される。

4月24日から始まるこの展示には、絵画やタペストリー、典礼用の家具、そして19世紀のフランス君主、シャルル10世が注文した長さおよそ25メートルの絨毯などが展示される見通しだ。

今回の展示に出品される22点の絵画のうち、13点はフランス語で5月を意味する《Mays》と題された献上画のシリーズの一部で、作品がまとめて展示されるのは2世紀ぶりとなる。

76点に及ぶ宗教画は、パリの金細工職人の組合によって制作され、1630〜1707年の間に大聖堂に寄贈された。代表的な制作者には、シャルル・ル・ブランやローラン・ド・ラ・イール、シャルル・ポアソンなどが含まれる。

モビリエ・ナショナルのディレクターを務めるエマニュエル・ペニコーは、アメリカのオンラインメディア「Observer」に次のように語っている

「幸運なことに、ほこりと水によるダメージを取り除くだけで済んだので、想定以上に早く展示することができました。むしろ奇跡と言ってもいいでしょう。火災の翌日には大聖堂から絵画の搬出作業を始め、すべての作品を修復することを決意しました。この展覧会は、制作された当時に展示されていたように、描かれた順番に並べられており、それを一度に見られるいい機会となっています。完成した当日と同じような姿で作品が並ぶのです」

絵画の修復は、モビリエ・ナショナルとフランス国立博物館美術館保存修復研究センター(C2RMF)の協力のもと、教会の修復と発掘作業を担当するフランス文化省文化局(DRAC)の専門家によって実施された。

他にも、9点の宗教画や、ナポレオン3世の結婚式など、重要な機械に数回しか使われなかった精巧な聖壇絨毯、そして聖母マリアが描かれた14枚のタペストリーなどが展示される。また、パリを拠点とするデザイン会社、ギヨーム・バルデがデザインした現代的な教会家具も展示される見通しだ。

ノートル大聖堂は12月から再び観光客を受け入れる計画だ。(翻訳:編集部)

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