ストック画像サービスのゲッティがAI生成画像の登録を禁止。理由は著作権問題
ストック画像サービスのゲッティイメージズ(Getty Images)は9月21日、米オープンAI(非営利団体)の「DALL・E(ダリ)」や、米メタ社の「Make-A-Scene(メイク・ア・シーン)」などによるAI生成画像を、同社プラットフォームに登録することを禁止すると発表した。
ゲッティイメージズは、AIツールで作成された画像の著作権に関して、現行の著作権法では明確な取り決めがないことが今回の決定に至った理由だとしている。
同社のクレイグ・ピーターズCEOは、テック系メディアのザ・ヴァージにこう説明している。「AIが生成した画像に関しては、著作権上の大きな懸念がある。たとえば、画像そのもの、画像のメタデータ、画像中の人物の権利など、未解決の問題がいくつも存在する。(著作権侵害で訴えられるなどして)顧客が不利益を被らないよう、先を見越しての判断だ」
著作権に関する同社の懸念には根拠がある。画像生成AIは、アルゴリズムを学習させたり、新しい画像を生成したりする際の素材にするため、ウェブ上の画像を収集している。しかし、自動収集される画像の中には、ニュースサイトやゲッティなどのストック画像サービスに掲載された著作権のある画像も多い。
これについては、テック系メディアのギズモードがテクノロジーブロガーのアンディ・バイオの行った調査を紹介している。同調査によると、英スタビリティAI社の「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」というDALL・Eに似た画像生成AIの画像データセットを分析したところ、1200万点の画像のうち3万5000点がストック画像サービスのサイトから収集されていたことが判明したという。
画像をこのように利用することが米国の著作権法に触れるどうかについては、法的な判断を要する。通常、著作権で保護された素材をクリエイターが許可なく使った場合、それが「変容的利用(*1)」であると証明できなければ「フェアユース(*2)」だとは認められない。
*1 変容的利用(transformative use)は1994年に最高裁で争われた著作権裁判の判決における考え方。元の作品を新しい表現や意味または主張を伴って変化させているかどうかなどによって判断される。
スタンフォード大学図書館のサイトに掲載されたフェアユースの解説にあるように、一般に変容的利用に該当するのは、利用する著作物に対する解釈、批評、パロディである場合だ。DALL・EなどのAIツールによる画像生成が果たして著作物の変容的利用と言えるかどうかは、自動生成という性質上かなり難しいだろう。
アートやAI分野の専門家の多くは、この問題を解決するためには新たな法整備が必要だとしている。
ディズニーやワーナー・ブラザーズなどをクライアントに持つアートディレクター兼アーティストのジェイソン・フアンは、先頃フォーブスの取材で次のように述べている。「ビジネスの側面から言うと、人間が制作した作品の代わりにAIが生成した画像を使うには、まず著作権の問題をもう少しはっきりさせる必要がある。問題は、現行の著作権法が時代遅れで、技術の進歩に追いついていないことだ」
ホワイトハウスのAI政策タスクフォースの一員でデータサイエンティストのダニエラ・ブラガも、「法的措置」が必要だと述べている。フォーブスに対するブラガの答えはこうだ。「AIモデルに学習させるために、存命アーティストの作品画像を許可なく使ったのであれば、著作権上の問題がある」
ゲッティは、情報源の信ぴょう性を証明し、デジタルコンテンツの出所や経緯、来歴を認証する技術規格開発に取り組む標準化団体「C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)」と協力しながら、AIが生成したコンテンツをフィルタリングするとしている。だが、こうしたツールが有効かどうかについては明らかになっていない。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月22日に掲載されました。元記事はこちら。