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シチリアの神殿の谷で新たな建築物を発見! この地域で信仰されていた宗教の解明に期待

イタリアのアグリジェントにある神殿の谷で新たな構造物が発見された。建設された年代はまだ明らかになっていないが、宗教的な儀式に使われていた可能性が高いという。

イタリアのアグリジェントにあるコンコルディア神殿。2022年に撮影。Photo: Courtesy of Wikimedia Commons

イタリアのアグリジェントにあるシチリアの神殿の谷で、地中に眠っていた建築物が新たに発見されたことが考古学誌『Journal of Archaeological Science: Reports』に掲載された論文から明らかになった。この建物は、古代都市における宗教的な儀式を行うために使われていた可能性がある。

紀元前580年ごろ、アクラガスと呼ばれていたギリシャの植民都市として建設された神殿の谷は現在、南ヨーロッパにおいて最も貴重な遺跡の一つであり、1997年にはユネスコの世界遺産に登録されている。神殿の谷はカルタゴの侵攻によって紀元前406年に破壊されたが、その後ローマの支配下で存続し続けた。

神殿の谷は19世紀に初めて発掘され、その作業は20世紀まで続いたが、発見されていない建物もまだ残っている。

研究チームは、地下に眠る遺跡の位置を示す3000平方メートルに及ぶ物理探査技術を駆使して建築物を発見した。その大きさと形から、地中にある物体が構造物だという結論に至ったのだ。

試験的な発掘作業を行っていたところ、研究チームは石でできた巨大な壁を発見した。その際には、別の時代に使われていた家庭用の窯の残骸も発見されたという。

発掘チームのメンバーであり、カターニア大学の応用地球物理学准教授を務めるセバスティアーノ・インポーザはアート・ニュースペーパーに次のように語っている

「これまで発見されていなかった遺跡がアグリジェントでこれから発掘されることを考えると、胸が躍ります。今回の発見によって、この場所でどんな宗教が信仰されていたのかをより深く理解できるだけでなく、聖域と住宅地の間に位置するこの地域の建物が、どの順番で建設されたかを特定することにも役立つかもしれません」

新たに発見された建築物が建てられた年代や当時の役割等はわかっておらず、別の大きな構造物の一部である可能性も残されている。2025年4月まで続く発掘調査によって、詳細な情報が明らかになるはずだ。(翻訳:編集部)

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