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  • 2023.12.20

万里の長城はコケや微生物たちが守ってきた! 最新研究が明かす「バイオクラスト」の力

2000年以上にわたり風雨にさらされてきた万里の長城。その一部に生えるコケやシアノバクテリアの層が、この歴史的建造物を浸食から守る役割を果たしていることが新たな研究で明らかになった。

Photo: VCG/VCG via Getty Images

2000年以上の歴史をもち、歴代王朝によって修理と延伸が繰り返されてきた中国の万里の長城。数千kmの長さをもつこの建造物は、長年にわたり風雨による浸食や人為的な損壊の被害にさらされてきた。しかし、2023年12月に『Science Advances』誌に発表された新しい研究で、「バイオクラスト」と呼ばれる生物の層がその壁を雨風の驚異から守ってきたことがわかった。

バイオクラストはコケや地衣類、真菌類、細菌類といった生物の集合体だ。論文によると、このバイオクラストは今回の調査対象となった約600kmの区間の約67パーセントを覆っていた。頑丈な構造をつくるため、万里の長城には砂利や砂、練り土といった自然素材を使われたが、こうした材料が微生物の生息と成長に理想的な環境を生み出したという。

このバイオクラストに覆われていた壁とむき出しの壁からサンプルを採集し、実験環境で一連の実験をおこなったところ、バイオクラストに覆われた壁は最大で約3倍の強度をもっていることがわかったという。またバイオクラストが雨風や気温の変化から壁を保護し、構造に安定性をもたらしていることもわかった。ただし、その保護機能の高さはバイオクラストの特徴や気候条件、建造物の構造によって変わることもわかっている。

コケや菌類などの生物は遺跡や建造物にとって有害とされ、保全活動の一環として取り除かれがちだ。しかし、今回の研究結果はそうした保全のメソッドに疑問を投げかけている。

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