今週末に見たいアートイベントTOP5:世界の不均衡を見つめるアルフレド・ジャー、大小島真木が表現する「生」のかたち
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. ユアサエボシ|でいかい(ギャラリー小柳)
架空の画家が眺めた「戦争」
1983年生まれのユアサエボシは、大学卒業後に就職した金融会社が倒産し、その後美術学校に進学したという異色の経歴を持つ。その中で澁澤龍彦の著作などを通じてシュルレアリスムの世界に出会い、憧れの芸術家たちと同じ時代に生きたいという欲求から、自らを大正生まれの三流画家ユアサヱボシ(1924-1987)として位置づけ、当時の画風を模した絵画制作に取り組むようになった。
本展では、そんなヱボシが経験し、残したとされる「戦争」にまつわる絵画を展示する。ヱボシは健康上の理由で従軍経験はなく、疎開先で終戦を迎えた。展覧会のタイトル「でいかい」は、「泥の塊」と「泥の海」という二重の意味を持つ言葉で、戦争に行かなかった者が見た時代の濁流と、そこから掬い上げられた記憶を表している。会場には、ヱボシが多様な角度から「戦争の残響」を描いた作品が並んでいる。
ユアサエボシ|でいかい
会期:2025年12月20日(土)~2026年3月7日(土)
場所:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月祝
2. 小出楢重 新しき油絵(府中市美術館)
日本の風土に根ざした油彩を追究した画家の全貌
近代日本の代表的な洋画家、小出楢重(1887-1931)の回顧展。大阪に生まれ、同地を拠点に活動した小出は、大正から昭和初期にかけて「日本人としての新しき油絵」を追究し、軽妙なデフォルメと艶やかな絵肌で、静物画や裸婦像に数々の傑作を残した。と同時に東洋と西洋の文化的風土の違いを強く自覚し、そのうえで日本人としていかに油絵を描くべきかを追究した。
25年ぶりの回顧展となる本展では、楢重芸術の真骨頂である裸婦像をはじめとした代表作が一堂に会する。日本画・ガラス絵・装幀・随筆といった多方面にわたる仕事や、設立に参加した信濃橋洋画研究所の活動とあわせて、モダンな時代を彩った楢重の活動の全貌を紹介する。
小出楢重 新しき油絵
会期:2025年12月20日(土)〜2026年3月1日(日)
場所:府中市美術館(東京都府中市浅間町1丁目3番地[都立府中の森公園内])
時間:10:00〜17:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(2月23日を除く)2月24日
3. 伝神写照―東アジアの人物表現とものがたり―(大和文華館)
東アジアで育まれた人物表現と物語を辿る
「伝神写照」とは、4〜5世紀中国の肖像画の名手・顧愷之(こがいし)が述べた言葉で、描かれる対象をその本質まで活き活きと写し表すことを指す。古来より肖像表現に深い関心をもっていた中国では、儒教・仏教・道教などの信仰にまつわる尊像、有名な歴史人物の姿やその逸話などが絵画化されてきた。それらを鑑賞することで、人々は祈りをささげ、悠久の歴史を知り、古今の人物を顕彰し、わが身を正す鑑としたのだ。
これら中国で育まれた人物表現と物語は、絵画工芸のみならず漢籍や経典などを通して、朝鮮半島や日本、琉球など近隣の国々にも伝わり、それぞれの文化・歴史的風土のもと、独特の趣をもつ作品が生み出された。本展では、同館が所蔵する中国、朝鮮半島、日本、琉球の書画漢籍42件を通して、東アジアで展開した多彩な人物表現と、それにまつわる物語を紹介する。
伝神写照―東アジアの人物表現とものがたり―
会期:1月6日(火)〜2月15日(日)
場所:大和文華館(奈良県奈良市学園南1-11-6)
時間:10:00〜17:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜
4. 大小島真木 個展「渦き Resonant Wounds」(ANOMALY)
分断を超えて響き合う「生」の形
大小島真木、辻陽介によるアートユニット「大小島真木」による個展。同ユニットは作品を通して出生や死、儀礼や芸能、地質や環境、生命の循環といった、私たちの「存在の輪郭」へと深く分け入ってきた。その関心の根にはつねに、「私たちが(ある)とはどういうことなのか」という問いが存在する。
本展のタイトル「渦き(うずき)」は、大小島真木による造語だ。それは私たちの生が抱える痛みや脆さの源となる傷(疼き)が、互いに触れ合い、絡まり、響き合いながら渦巻き、世界を形作るさまを指している。本展ではこれまでの大小島真木の代表的なシリーズに、本展に向けて制作された新作を交え、絵画、映像、立体、ドローイング、そして言葉(詩)が並ぶ。これらの作品によって示されるのは、分断を超えて響き合う「生」の形であり、普遍的でありながら極めて切実な世界観だ。
大小島真木 個展「渦き Resonant Wounds」
会期:1月17日(土)~2月14日(土)
場所:ANOMALY(東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F)
時間:12:00~18:00
休館日:日月祝
5. アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち(東京オペラシティ アートギャラリー)
世界の不均衡を詩的に検証する、ジャーの半生を振り返る
1956年チリのサンティアゴに生まれたアルフレド・ジャーは、建築と映像制作を学んだのち1982年に渡米。以後ニューヨークを拠点として国際的に活躍している。彼は1980年代にニューヨークの都市空間へ介入する作品によって注目を集め、1986年のヴェネチア・ビエンナーレ、1987年のドクメンタ両方に招待された初のラテンアメリカ出身の作家となった。以降、現在にいたるまで、社会の不均衡や世界各地で起きる地政学的な出来事に対する繊細な視点と真摯な調査に基づいた作品で知られる。日本では、2018年にヒロシマ賞の第11回目の受賞者となり、2023年には広島市現代美術館で受賞記念展が開催された。
本展では、広島の個展で依嘱された⼤型作品をはじめ、1970年代の初期作品から代表作、そして本展のために制作する新作が出品される。作家が半⽣を振り返りながら構成した本展は、世界の諸問題と向き合い続けてきたジャーの実践を総覧するとともに、私たち自身が世界の現実をどのように見つめ、考えるべきかを問いかける機会となるだろう。
アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち
会期:1月21日(水)~3月29日(日)
場所:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)
時間:11:00~19:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(2月23日は除く)2月8日、2月24日
































