訃報:韓国現代美術の巨匠チョン・サンファが93歳で死去。単色画運動を牽引、最晩年まで創作と向き合う

韓国の単色画(ダンセッカ)運動を代表する人物であり、韓国現代美術の巨匠チョン・サンファが1月28日に死去した。93歳だった。

作品制作するチョン・サンファ。Photo: Gallery Hyundai.

韓国の単色画(ダンセッカ)運動の主要人物であり、韓国現代美術の中心的存在だったチョン・サンファが、病気療養中のところ1月28日に死去したとコリア・タイムズが伝えた。93歳だった。

1932年、日本統治下の韓国に生まれたチョンは、家族の反対を押し切って1953年にソウル大学校美術大学へ進学した。朝鮮戦争直後の混乱の時代にあって、彼は一時期アンフォルメルの強い身体性を伴う表現に取り組み、当時の韓国社会に蔓延していた喪失感や不安、恐怖を作品に投影した。

しかし1967年に日本の神戸へ移住して以降、チョンは新たな様式を模索し始める。まずキャンバスから色彩を排除し、白の多様な階調に没入していったが、それだけでは不十分だと感じるようになる。やがて彼は、平坦な単色表面に、より大きな動きと奥行きが必要だと考えるようになった。

その過程で生まれた彼の代名詞的な技法は、カオリン粘土と水を混ぜた粘性の高い素材でキャンバス全体を覆うことから始まる。表面が乾燥すると、キャンバスから木枠を外し、縦横に折り畳む。続いて硬化した粘土を剥がし、露出した部分にアクリル絵の具を幾層にも塗り込んでいく。この「剥がすこと」と「埋めること」を反復する行為は、あらかじめ構想されたデザインとしてではなく、制作過程の残滓として格子状の構造が立ち現れるまで続けられる。こうして生まれた作品は、制作に関わった目に見えない全ての触覚的要素を記録したものとなっている。

チョン・サンファ作品。Photo: Instagram/galleryhyundai

その後、妻を亡くしたことを契機に、1977年から約15年間フランスに在住。赤や青、黒といった単色の色彩を用い、自身の仕事に新たな視覚的エネルギーを吹き込んだ。

こうしたチョンの表現は、1960年代にパリでのレジデンシー・プログラムに参加し、韓国アンフォルメル運動の立役者となった画家、パク・ソボ(1931–2023)によって、1970年代半ばに「単色画」として言語化された。単色画の主要画家としては、パクやチョンと並び、李禹煥の名も挙げられる。

チョンは1992年に韓国へ帰国し、晩年に病に倒れるまで制作を続けた。2023年にスイス人キュレーター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストのインタビューに応じた際、彼は自身の仕事について次のように語っている。

「完成というものは存在しません。芸術とは、ある意味で、終わりのないものを始めることです。果てしないことを行うことなのです」

チョン・サンファの作品を網羅的に紹介する大規模な回顧展は、2011年にフランスのサン=テティエンヌ・メトロポール現代美術館、2021年には韓国の国立現代美術館で開催された。(翻訳:編集部)

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