韓国政府がアートに本腰。新法制定で現代アーティストの海外進出と収益獲得を推進
韓国では今夏、アート作品の取引に関する2つの重要な法律が導入された。1つは、韓国の戦後美術に対する輸出規制の緩和、もうひとつは作品の再販に対するアーティストへのロイヤリティだ。
この夏、韓国ではアートに関する2つの重要な法律が導入された。アートニュースペーパーが伝えた。
1つは、1945年以降に韓国で制作された作品の国際取引を規制緩和する「文化財保護活用法」。韓国の国家遺産管理局によると、この背景には、2018年から2023年の間に、約200点の作品が国外持ち出し禁止となったことがある。アジアで豊富な取引経験を持つアートアドバイザリー企業を運営するタニヤ・バクスターはこの規制緩和について、「海外バイヤーやギャラリーによる韓国人アーティストの取り扱いを促進し、国際的な認知度を高めることで、韓国のアート市場を活性化させることが期待されています」と語る。バクスターによれば、これにより、「より多くの韓国人アーティストが国際的なアートフェアに参加しやすくなる」という。
もうひとつは「アート振興法」。そこには、作品の再販に対するアーティストへのロイヤリティも盛り込まれており、2027年から施行される予定。権利の有効期間は、死後30年間と規定されている。これにより、アーティストは自身の作品がオークションなどで再販された場合、ロイヤリティを受け取ることができるようになる。「アート振興法」では、政府は国内のアート市場の促進に尽力し、その進捗状況を詳細に記した報告書を5年ごとに発表することが義務付けられている。
さらに、振興法では美術品取引の透明性と安全性を高めるべく、ディーラーやオークションハウスは、作品の保証書を買い手に提供することが義務付けられる。また、ギャラリーやオークションハウス、アートフェアなどのアート関連会社は、取引に関する年次報告書を提出しなければならない。
バクスターのようにこれら新法により「アート市場の活性化」に期待を寄せる人がいる一方で、懸念を示す者もいる。韓国生まれで、ニューヨークを拠点とするアートアドバイザリー会社、Jung & Co Art Advisoryを共同設立し、文化体育観光部やおよび韓国芸術経営サービスなど韓国政府の支援を受けたプロジェクトに携わってきたジヨン・チョンは、これらの法律が遵守されるか懐疑的だ。彼女は「特にアーティストの再販売権は、芸術振興法の中でも最も厄介なものの一つです。2027年7月に発効しますが、実際に守られるかどうかは疑わしい。ギャラリー、オークションハウス、アートディーラーは、帳簿を開示することにためらいを持っているので抵抗するかもしれません」と述べている。
from ARTnews