アニッシュ・カプーア、数億ドル規模の宇宙プロジェクトを構想──スペースXの関与は否定

アニッシュ・カプーアが、自身の彫刻作品を宇宙に送る構想を明かした。制作費は数億ドル規模に上る可能性があるというが、資金提供者の詳細は明かされておらず、イーロン・マスク率いるスペースXも関与していないとされる。

アニッシュ・カプーア。Photo: Roberto Serra/Iguana Press/Getty Images
アニッシュ・カプーア。Photo: Roberto Serra/Iguana Press/Getty Images

鑑賞者に思考を促す作品で知られるターナー賞受賞作家、アニッシュ・カプーアが、自身の彫刻作品を宇宙に送ろうとしている。

具体的な作品像はまだ定まっていない。ただ、カプーアはタイムズ・オブ・ロンドンの取材に対し、「何が十分なのか。広大で永遠とも言える宇宙空間に見合うものとは何なのか。地球から見えるものを宇宙に置くというのは、きわめて野心的な試みです」と語っている。構想段階では、彫刻に鏡が用いられる可能性もあるという。

宇宙に作品を送り出す試みは野心的だが、それを「偉業」と見るか、単なる「見せ物」と見るかは立場によって異なる。いずれにせよ、カプーアが初めてというわけではない。Art in America誌が2023年に指摘したように、ジェフ・クーンズからタヴァレス・ストラカンまで、複数のアーティストがすでに同様の試みを行ってきた。同誌は、アートを宇宙に送る行為が、民間による宇宙産業を「超富裕層の遊び道具」として捉える見方を浮き彫りにしていると書いている。

資金提供者は明かされていないが、カプーアは制作費が数億ドル規模に上る可能性があるとし、支援者はアメリカ人に限らないとも示唆した。また、スペースXがクーンズの打ち上げ計画に関与した例はあるものの、マスクは今回の支援者に含まれていない。

カプーアはさらに踏み込み、マスクが極右活動家トミー・ロビンソンのような人物に資金提供していることを批判した。ロビンソンはイスラム嫌悪的な投稿によって、イギリス国内で一定の支持を集めている人物だ。カプーアはマスクの宇宙開発の姿勢についても、「金と露骨な資本主義に深く根差している」と嫌悪感を示し、「イギリスにおける彼の政治的影響力にも反対している」と述べ、こう続けた。

「宇宙における政治はかなり不快なものです。私たちは代わりに、使い道がなくどこか魔法のような芸術作品を打ち上げたいと考えています。支援者からの賛同も得られています」

ただ、スペースXのロケットで打ち上げられたクーンズの彫刻作品125点が、社会にとってどれほど有用だと見なされるのかは判然としない。とはいえ、こうした評価の曖昧さもまた、この種のプロジェクトにつきものだ。

カプーアはこれ以外にも、今年のヴェネチア・ビエンナーレ期間中にヴェネチアで個展を開催するほか、2月11日からは所属ギャラリーであるリッソン・ギャラリーで展覧会を実施するという。

これらの展覧会で公開される作品は、カプーアが宇宙に打ち上げる構想の彫刻よりも小規模なものになる見込みだ。彼によれば、宇宙はこれまで、自身が制作しようとしているほど巨大な彫刻を目にしたことがないという。一方で、アートを宇宙に送る行為が、一部の研究者が「宇宙植民地主義」と呼ぶものに加担しているのではないかという批判を完全に払拭することはできず、カプーアは「占有できないものを、詩的に占有することが目的だ」と語っている。(翻訳:編集部)

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