ARTISTS’ FAIR KYOTO 2026レポート──若手アーティストを支え、育むためのアートフェア

2月21日、「アーティストが主導する」異色のアートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2026」(AFK)が開幕した(会期は23日まで)。会場は京都国立博物館 明治古都館と東福寺。9回目を迎えた今年は、若手アーティスト40組が参加している。

今年の京都国立博物館 明治古都館会場風景。Photo by:Kenryou Gu

「ARTISTS’ FAIR KYOTO(AFK) 2026」が、京都国立博物館 明治古都館と東福寺を会場に2月21日から23日まで開催される。従来のギャラリー主導型とは異なり、アーティスト自らが企画から販売までを担うアートフェアとして2018年に始動したAFKは、今年で9回目を迎える。

メイン会場の京都国立博物館では、創設者でディレクターの椿昇に加え、加藤泉名和晃平大巻伸嗣ら第一線で活躍する16人のアーティスト(アドバイザリーボード)による推薦、または一般応募を経て選出された40歳未満の若手作家40人が出展。アーティスト自らが、アドバイザリーボードの助言を受けながらフェア出展において企画から販売まで行うのがAFKの特徴だ。東福寺会場では、アドバイザリーボードの作品に加え、AFK出身作家5人の展示も行われている。

現代美術家であり京都芸術大学教授でもある椿は、学生とマーケットの断絶をつなぎ直すため同大学の卒業制作展をアートフェア形式へと転換するなど、さまざまな形で若手育成に尽力してきた。開幕スピーチでは、多くの若手アーティストが生計を立てることに苦心している現状があることに触れ、AFKでは販売額の作家取り分を原則100パーセントとする仕組みを導入していることを強調した。

さらに椿は、江戸時代には掛け軸や浮世絵などが生活空間に飾られ、人々が身近に美術を楽しんでいた文化があったが、近代以降は芸術が美術館という制度空間に回収されていったと指摘。AFKを通じて、再び「アートと共に暮らす」感覚を社会に取り戻したいと熱意を語った。

プレビューでは、出品作家の中から優れたアーティストを選出するART AWARDの受賞者も発表された。優秀賞に伊地知七絵、白簱花呼、髙橋凜、最優秀賞に中西凜が選ばれ、中西には作品制作および個展開催を支援する100万円が授与された。

京都国立博物館での展示は、作家の創意工夫が伝わる興味深いものが多かった。中でも特に印象に残った展示を紹介する。

ナガタダイスケは「偶然性」を探求

ナガタダイスケ作品。
ナガタダイスケ作品。

一見ソフトフォーカスの絵画にも見える作品に近づくと、それが写真であると分かった。ナガタダイスケは俯瞰で撮影した風景の一部をデジタル上で大胆に拡大し、画像処理を施す。何が写り込んでいるのかは、拡大して初めて判明する。その偶然性こそが作品の核だ。推薦者は今回初めてアドバイザリーボードに参加した写真家・鷹野隆大。ナガタは東京造形大学で鷹野に学んだ。AFK出品にあたり、サイズ展開や価格設定について具体的な助言を受けたという。

トイレを展示場所に選んだ髙橋凜

髙橋凜作品。
髙橋凜作品。

トイレという異色の場所を展示空間に選んだのは髙橋凜だ。「自然光が綺麗な場所」を探したらここに行き着いたという。たっぷりの日差しが注ぐ窓際に掛けられているのは、テラコッタ製の鳥を備えた折り畳み傘。内部に藁が詰められ、機能を失った傘は、「使えないもの、人が見向きもしないもの」を人はどのように受容するのか、その過程を提示する試みだという。磁石で容易に着脱できる鳥のモチーフには、全ては固定されたものではなく、いずれ変化していく存在であるというメッセージが込められている。

品川美香は3度目の参加

品川美香作品。

画家の品川美香は、3回目のAFK参加を公募で勝ち取った。今回も参加した理由を聞くと、2回目の参加となった昨年、品川の作品を見て涙を流した人を目の当たりにしたからだという。AFKではアーティストが出展準備から接客までの全てを担うため、緊張もすれば体力も消耗する。しかし、「新たな出会い」を得られることが参加の醍醐味であるという。今年は作品の背景に古典絵画の技法であるスフマート技法を取り入れるなど、新たな表現に取り組んだ。

最優秀賞の中西凜が表現した「平和の脆弱さ」

中西凜作品。
中西凜作品。

最優秀賞に選ばれた中西凜のブース中央には、内部にハトのオブジェが置かれたガラス製の冷蔵庫が設置されている。中西が洋菓子素材を用いた彫刻を制作するのは、洋菓子店に生まれ、東京藝術大学で彫刻を学んだ自身にとって、それが「自分を形容する素材」だから。平和の象徴であるハトはチョコレート素材で作られており、手で触れたり室温下に置いたりすると溶ける性質を持つ。そこには、象徴が孕む不安定さや、平和の脆弱さが重ねられる。完成予想図が描かれた平面作品とともに壁面に展示された制作レシピの存在は、やがて消えゆく彫刻に別のかたちの持続性を与える装置となる。

「一方的に他者から見られる存在」を描いた白簱花呼

白簱花呼作品。

淡い色調で描かれた裸婦像は5本の腕が伸び、その髪はビクトリア調のスタイルに整えられている。肉体に対してバランスを欠くような印象を与える顔は、取って付けたようにも見える。白簱花呼は、ヌードという西洋名画における「古典的美のオブジェ」と自身の顔を重ねることで、「一方的に他者から見られる存在」というイメージをより鮮明に浮かび上がらせた。白簱は、京都芸術大学の恩師であり推薦者である池田光弘から受けた「観客にどう見られたいかだけを考えて制作してはいけない」というアドバイスから、自身の無意識の気負いに気づいたという。彼女は、友人などが自身の作品に抱く印象とは真逆の「爽やか」という言葉を観客から聞き、新鮮な体験だったと語った。

ARTISTS' FAIR KYOTO 2026
日程:2月21日(土)~23日(月祝)/AFK Resonance Exhibitionは3月1日(日)まで
会場:京都国立博物館 明治古都館(京都府京都市東山区茶屋町527)、臨済宗大本山 東福寺(京都市東山区本町15-778)

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