米政府、ChatGPTで補助金審査? 博物館の空調更新を「DEI」と誤認し取り消しか
米政府の補助金審査に生成AI「ChatGPT」が使われていたとする訴訟が連邦裁判所に提出された。博物館の空調システム改修がDEI関連と判定され、助成金が取り消された判断の妥当性が争われている。
アメリカの各省庁の支出を見直す政府効率化省(DOGE)が、ダイバーシティ、公平性、包括性(Diversity、Equity、Inclusion=DEI)プログラムに関連する補助金の申請を判定する目的で、生成AI「ChatGPT」を活用していたとする訴状が連邦裁判所に提出された。訴えによると、ノースカロライナ州のハイポイント博物館が老朽化した空調システムを更新するために受けた補助金が、DEI関連と判断され取り消されたという。
FOXニュースによると、ハイポイント博物館は収蔵品の保存に使う空調システムを更新するため、全米人文科学基金(NEH)から34万9000ドル(約5560万円)の補助金を受けていた。しかしその後、DOGEの職員が会話型AIを用いて申請内容を審査した結果、補助金の交付は取り消された。
政府職員がChatGPTを使っていたことは、米国学術団体評議会と米歴史学会が起こした訴訟を通じて明らかになった。両団体は、相次ぐ人文科学分野の補助金削減は違法であり、表現・学問の自由を侵害していると主張している。
訴訟に関連する陳述書で、DOGE職員のジャスティン・フォックスは、職員がChatGPTを使って補助金の説明文を分析し、DEIプログラムに関連した申請かどうかを判断していたと説明している。職員はAIの回答をスプレッドシートに記録し、どの補助金を取り消すかを判断する際の指針として活用したという。
米歴史学会によると、このスプレッドシートは、打ち切る補助金を特定するためにNEH職員が作成していたリストの代わりとして使われるようになった。
スプレッドシートの項目の一つには、ハイポイント博物館による空調システムの改修費用の申請が含まれていた。博物館側は、空調設備が刷新されることで収蔵品の保存環境も改善され、長期的には来館者のアクセス向上につながると主張していた。
ChatGPTは申請内容を分析した際、保存環境の改善が「多様な来館者のアクセス向上」を促進すると解釈し、このプロジェクトをDEI関連の取り組みと分類した。館長のエディス・ブレイディによると、補助金が取り消された時点で工事はすでに始まっていたが、契約終了条項により交付額の約70%を回収できたという。
スプレッドシートには、歴史的に黒人学生が多く通う大学として知られるノースカロライナ・セントラル大学による申請も含まれていた。同大学はデジタルアーカイブコレクションを活用した教材開発を計画していたが、この申請もDEI関連の取り組みと分類されていた。
学術団体の弁護士たちは、専門家による審査がAIに依存した拙速なプロセスに置き換えられた結果だと批判している。現代語学文学協会のエグゼクティブ・ディレクター、ポーラ・クレブスはFOXニュースに対し、次のように語った。
「今回の訴訟によって、政権が民主主義的な手順を踏まず、人文科学の価値をまったく顧みていないことが露呈したのです」
(翻訳:編集部)
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