国立西洋美術館など7施設で「二重価格」導入へ。インバウンド客の入館料引き上げ、自己収入拡大へ
日本の国立博物館・美術館で、日本居住者と訪日観光客の入場料を分ける「二重価格」制度を2031年3月までに導入する方針が固まった。文部科学省の中期目標を踏まえ、増加するインバウンド需要を自己収入の拡大につなげる狙いがある。

国立文化財機構(NICH)と国立美術館が管轄する博物館・美術館で、日本居住者と非居住者で入場料を分ける「二重価格」制度を、2031年3月までに導入する方針が固まった。文部科学省が今年2月に策定した中期目標では、増加するインバウンド需要を自己収入確保の機会として活用する狙いが示されている。
対象となるのは、NICHが管轄する国立博物館4館と皇居三の丸尚蔵館、さらに国立美術館が管轄する東京国立近代美術館、国立新美術館、国立西洋美術館など計7施設。いずれも現行の入場料引き上げとあわせて二重価格が導入される。
この方針が策定された背景には、国立文化機関の財務構造に対する危機感がある。NICHおよび国立美術館はいずれも、運営費交付金など国費が全体の6割以上を占める構造が続いており、持続可能な運営に向けた自己収入の拡大が長年の課題となっていた。中期目標には、海外主要館と比べると来館者数は低水準にあり、その結果として入場料収入も伸び悩んでいると記されている。
一方、日本への観光客数は2025年度に4200万人を超え、政府は2030年度に6000万人へ増やす目標を掲げている。これを受け文化庁は、国際観光客税の財源も活用しつつ、観光客の増加を自己収入確保の機会として生かすようNICHに促した。NICHは将来的な来館者目標として、国立博物館全体で約1200万人、国立美術館で約1000万人を掲げている。
中期目標では数値目標も示された。展示事業費に対する入館料やグッズ販売など自己収入の割合について、目標期間(2026〜2031年度)の最終年度に65%以上を達成し、次期中期目標期間には100%を目指すとしている。また2029年度時点で自己収入の割合が40%を下回り、収益改善の見込みがない施設については、閉館を含む再編を求められる可能性がある。
二重価格は、オーバーツーリズム対策としてインドのタージ・マハルやアメリカの国立公園など、世界各地の遺跡や公園などで導入されている。またフランスでは、ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿がEU域外からの来館客の入場料を引き上げており、この動きはオルセー美術館など主要文化機関への波及が見込まれている。こうした先例を背景に、国内でも観光地を中心に価格差別化の議論が高まっており、今回の方針もその流れに位置づけられる。
今回示された目標は、財源確保だけでなく、コレクションの保存・修理、教育普及活動の充実、老朽化施設の維持更新といった本来業務を安定的に支える基盤づくりも目的としている。中期目標にはこのほか、夜間開館の充実、多言語対応の強化、デジタルアーカイブの拡充なども盛り込まれている。