ビープル「75億円のNFTアート」真の購入者は誰? 購入関与めぐる訴訟が決着
2021年にビープルのNFT作品が75億円もの金額で落札されたのは、ブームの本格的到来を象徴する出来事だった。その後起きた落札者をめぐる訴訟がこのほど和解に至ったが、その間にもNFT市場は大幅に縮小している。

2021年3月、クリスティーズのオークションで、ビープルのNFTアート作品《Everydays: The First 5000 Days(エブリデイズ:最初の5000日)》(2021)が、NFT史上最高額の6930万ドル(当時の為替レートで約75億円)で落札された。落札者はシンガポールの暗号資産ファンドMetapurse(メタパース)を設立したMetakovan(メタコバン)と名乗る人物で、Twobadour(トゥーバドール)を名乗る購入協力者がいるとされていた(本名はそれぞれヴィグネシュ・スンダレサンとアナンド・ヴェンカテスワラン)。
しかし、2022年にスンダレサンとヴェンカテスワランは袂を分かち、その1年後、スンダレサンと彼の会社ポートキー・テクノロジーズは、ヴェンカテスワランを提訴。ヴェンカテスワランがビープル作品の購入に関与したと吹聴したことが、商標権侵害、営業上の信用毀損および商標の希釈化に当たるというのが理由だ。スンダレサンは、ヴェンカテスワランは作品購入とは何の関係もなく、当時はメタパースの単なる個人受託業者に過ぎなかったと主張していた。
今年1月、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所のJ・ポール・オトケン判事が、両者による和解を承認したことでこの訴訟は決着した。その第一報を伝えたアートネットニュースによると、ヴェンカテスワランはビープル作品の買収に関与した、あるいはその責任を負ったと主張または示唆することに加え、ポートキー、メタパース、メタコバン、スンダレサン、およびトゥーバドール(ヴェンカテスワランがメタパースの受託業者として使用していた通称)に関連するウェブサイトやオンラインプロフィールに自身の名前やプロフィールを掲載することを法的に禁じられた。合意書には、スンダレサンとヴェンカテスワランの双方が署名している。
ヴェンカテスワランは3月初め、和解内容の遵守に関する書面を裁判所に提出した。その中には、ポートキーの全ソーシャルメディア・アカウントのフォローを解除または削除すること、スンダレサンとポートキーに決められた金額(非公開)を支払うこと、さらにはヴェンカテスワランとビープル作品の購入を関連付けている第三者ウェブサイトの経歴情報を訂正するよう働きかけることなどが含まれている。
これで、スンダレサンが《Everydays: The First 5000 Days》の単独所有者であることが確定したが、訴訟の間にNFT市場のバブルは崩壊の一途を辿っていた。今年1月、NFTの黎明期を支えた最も知名度の高いNFTオンラインマーケットプレイスNifty Gatewayが、サービス終了を発表。クリスティーズは昨年デジタルアート部門を閉鎖し、サザビーズは2024年にメタバースチームを縮小している。
また、2023年に金融・ブロックチェーンの専門家コミュニティ、dappGamblが発表したレポートでは、NFTの95%は無価値であると結論づけられていた。ブームの最盛期には有名企業やセレブを巻き込んだ訴訟が相次いだが、それらの係争中にNFT作品の価値が下落し続けていたことは間違いない。(翻訳:石井佳子)
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