アート・ドバイが5月に延期。湾岸情勢緊迫化を受け、急拡大する中東アートシーンに暗雲

アメリカイスラエルイランによる戦争の長期化が不安視される中、近年勢いを増していた湾岸地域の主要アートフェアアート・ドバイが4月から5月への開催延期を発表した。しかし、延期後のロジスティクスへの懸念は払拭されていない。

2025年のアート・ドバイで展示されたムハンマド・カゼムの新作デジタルアート作品《Directions (Merging)》。Photo: Getty Images for Art Dubai

中東随一のアートフェアとして独自の地位を築いてきたアート・ドバイが、アメリカイスラエルイランの間で続く戦争の影響で、4月に予定されていた開催の延期を余儀なくされた。イランによる報復攻撃が続いているアラブ首長国連邦(UAE)では、現地時間の3月18日時点での死者が8人、負傷者は158人に上り、ドバイ国際空港にも被害が出たことが報道されている。

そうした状況を受け、3月19日にアート・ドバイは4月の開催を見送ると発表。それに代わるものとして、5月14日から17日まで「状況に合わせた形の」フェアを開催することを明らかにした。開催地は従来と同様のリゾート地、マディナ・ジュメイラで、同フェアによる声明では次のように述べられている。

「前回の発表以降、私たちは全ての関係者と緊密な対話を続けてきました。その中で、アート・ドバイのようなプラットフォームを維持することが、より広範な文化エコシステムにとって重要であるという明確な認識が維持されています。今回は、より焦点を絞るとともに柔軟な形式を採用してギャラリーやアーティスト、美術館を集め、プレゼンテーション、コラボレーション、パブリックプログラムを組み合わせたフェアになる予定です」

アート・ニュースペーパーの報道によると、同フェアのディレクターを務めるドゥニャ・ゴットヴァイスによるものとされるメールでは、5月のフェアに参加するギャラリーにはブース使用料を免除し、代わりに売上高の一定割合の支払いを求めることが示されていたという(ブース使用料相当額が上限)。同記事では、アート・ドバイのブース料金は1平方メートル739ドル(最近の為替レートで約11万7000円、以下同)で、ブースあたりの料金は1万5000ドルから6万ドル(約237万〜948万円)まで幅があるとされている。一方、4月に参加が決定していたギャラリーが辞退する場合はブース料金を徴収されるが、参加資格は2027年に繰り越される。

今年2月、アート・バーゼル・カタールが初開催され、11月にはアブダビ・アートからリブランドされた第1回フリーズ・アブダビの実施が予定されるなど、アート市場における湾岸地域の重要性は極めて大きくなっている。中東が再び混乱に陥ったのは、その矢先のことだった。

周知のように、アメリカとイスラエルが2月28日にイランへの攻撃を開始した。これに対してイランは、湾岸地域にある米軍基地やUAE等の親米とされる近隣国への報復攻撃に出るなど、現在も軍事的応酬が続いている。こうした攻撃と報復でUAEの空域が一時閉鎖されたほか、数多くの航空会社がドバイおよび周辺地域への便を削減。そのため、延期後のアートフェアについても、湾岸地域への作品輸送、ディーラーやコレクターの移動に対する懸念が生じている。

この情勢でのフェア延期は、アート・ドバイにとって間違いなく痛手となるだろう。近年、アートディーラーや美術館、コレクターの関心が湾岸地域へと向かう中、同フェアは着実に存在感を増していたからだ。なお、軍事衝突への緊張感は高まっていたものの、アート・バーゼル・カタールは2月初旬に第1回開催を大きな混乱なく終えている。(翻訳:石井佳子)

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