ディズニー、OpenAIへの10億ドル出資計画を白紙に──「Sora」突然の終了で提携解消へ
OpenAIが動画生成AI「Sora」の終了を発表し、昨年12月に結ばれたディズニーとの提携も解消される見通しとなった。10億ドル規模の出資計画は白紙となり、AI動画をめぐる業界の勢力図にも影響を及ぼす可能性がある。

2025年9月にリリースされた動画生成AI「Sora」の終了が、3月25日に発表された。この決定に伴い、OpenAIが昨年12月にウォルト・ディズニー・カンパニーと結んだ提携も解消されることとなった。OpenAIは発表に際し、次のような声明を出している。
「Soraの提供を終了します。これまで作品の制作や共有を通じてコミュニティを築いてきたユーザーの皆さまに感謝します。今後のアプリやAPIのスケジュール、作品の保存方法などの詳細は、近日中に案内します」
ウォルト・ディズニー・カンパニーは昨年12月、10億ドル(当時の為替で約1557億円)の出資計画を発表していた。この提携では、200以上のキャラクターをSoraで生成される短尺動画に利用できるようにし、Disney+上でミッキーマウスやダース・ベイダー、グローグー、デッドプールなどをユーザー自身の動画に登場させる構想が描かれていた。ただし対象は、仮面を付けたキャラクターやアニメーション、動物系に限定され、実写俳優は含まれていない。こうした制限があったにもかかわらず、ディズニーファンの間では、キャラクターをAI動画に登場させることに慎重な見方が広がっていた。
株式上場を見据えた撤退
終了発表の当日、ディズニーとOpenAIはSoraの今後について協議していたが、会議終了からわずか30分後にディズニー側へ終了が通達されたという。ただし、OpenAIが動画生成そのものから撤退するわけではなく、同分野の技術は引き続き別の形で提供されるとみられる。
OpenAIは終了理由を公表していないが、2026年後半に予定される株式上場を見据えた経営判断との見方が強い。Soraは膨大な計算資源を消費する一方で収益モデルが確立しておらず、同社は資源をAGI開発など優先度の高い領域へ振り向ける方針とみられる。また、ハリウッド・リポーターが公開した座談会では、会話型AI「Claude」を手がけるAnthropicとの競争を背景に、企業向け・防衛分野へ軸足を移し、一般向け動画生成AIの優先度が下がったとの指摘も出ている。
Soraは発表当初、既存の知的財産や著名人の肖像を広く利用できたため、映像業界に衝撃を与えた。当時のOpenAIは、権利者が申告しない限り利用対象とする「オプトアウト方式」を採用していたが、制作スタジオやタレントエージェンシーの強い反発を受け、数日で方針転換を余儀なくされた。その後、IPや肖像の管理機能は強化されたものの、ディズニーは声優の許諾取得に苦戦していたとされる。
こうした経緯を踏まえると、Soraの閉鎖はディズニーに新たな判断を迫ることとなった。昨年の大型出資とキャラクター提供の背景には、この技術を最終的にDisney+へ統合する狙いがあったからだ。一方で、社内では看板キャラクターが質の低いAIコンテンツに利用されるリスクを懸念する声もあった。ハリウッドの労働組合も強く反発し、全米脚本家組合(WGA)は12月の声明で、今回の提携がクリエイターの価値を損なうと批判している。
次なる提携先をめぐる競争
OpenAIとの契約は消滅したが、ディズニーが別のAI企業と提携する余地は残る。実際、パラマウントを買収したスカイダンス・メディアCEOのデヴィッド・エリソンは、AIによって視聴時間と収益を大幅に拡大する構想を掲げており、競合が先に動く可能性もある。
提携の解消に際し、ディズニーの広報担当者はOpenAIの判断を尊重するとコメントしたが、業界ではその裏に不満がにじむとの見方もある。新CEOのジョシュ・ダマロは今回の件について直接の発言を控えているが、就任時のメモでは、「テクノロジーを受け入れ、新たな可能性を切り開く」と述べていた。同時にAIの活用については「極めて慎重に取り組む」とし、「ディズニーにおける創造性は常に人間が主導する」と強調している。
生成AIが映像制作に与える影響は今後も続くが、Sora単体で業界構造を変えるには至らなかった。一方で今回の撤退は、動画生成AI分野の勢力図にも影響を及ぼす。現時点で大規模なユーザー基盤をもつ企業は限られており、結果としてグーグルの存在感が相対的に高まる可能性がある。(翻訳:編集部)
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