ドイツ政府、略奪文化財返還の新評議会を設立へ──進展の一方で残る課題

3月30日、ドイツ政府が略奪文化財返還を進める評議会の設立を発表した。欧米諸国は近年、かつての植民地から持ち出した文化財の返還に本腰を入れ始め、そのための公式な枠組みが組織されるようになっている。

ンゴンソ(Ngonnso)と呼ばれるカメルーンの女神像。Photo: Erik Hesmerg/Staatliche Museen zu Berlin/Ethnologisches Museum.

ドイツ政府が、植民地時代に略奪した美術品の返還を監督する新たな評議会を設立する予定であることを、3月31日にアート・ニュースペーパー紙が報じた

30日にドイツ政府が発表した声明によると、新たに設立される「植民地時代の文化財および人骨の返還に関する調整評議会」は、ドイツ政府と州や地方自治体の代表者で構成される。ヴォルフラム・ヴァイマー文化相は新しい評議会について、「植民地時代の文化財や人骨を責任を持って取り扱う上で重要な一歩だ」と述べている。

以下に挙げるように、これまでにも略奪文化財の返還に向けた枠組みの構築を進める組織が欧州各国で立ち上げられてきた。なお、アメリカには海外から密輸された遺物の返還を義務付ける統一的な法律は存在しないが、スミソニアン博物館をはじめとする主要博物館の多くは、近年、略奪文化財に関する独自の指針を策定している。

  • フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2017年に、植民地時代にアフリカから略奪された美術品を返還することを公約。現時点で常設の機関はないが、今年1月にフランス上院で、文化財の返還手続きを正式に定めることを目的とした法案が満場一致で可決された。
  • 2021年に発足した「スイス・ベニン・イニシアティブ(Benin Initiative Switzerland)」は、この組織に参加しているドイツとスイスの8館が所蔵するベニン・ブロンズの来歴調査を行っている。その成果の1つとして、今年チューリッヒのリートベルク美術館が11点の返還を決めた(ベニンは現在のナイジェリアにあった王国)。
  • オランダでは2019年に、「植民地時代のコレクションに関する国家政策の枠組みを定める諮問委員会」が設立された。同委員会はオランダの返還政策を主導し、2024年にはインドネシアへの288点の文化財返還が実現している。

ドイツにおける新しい評議会の設立は、同国政府と各州が2019年に締結した合意に基づくものだ。この合意では、ドイツや他の欧州諸国によって旧植民地から不法に持ち出され、公的機関のコレクションになっている文化財の返還方針が確認されている。以降、2022年にドイツ国内5つの博物館の所蔵品から1100点以上のベニン・ブロンズがナイジェリアに返還され、2024年にはプロイセン文化遺産財団から旧植民地のナミビアへ23点の文化財が返還された。

しかし、ドイツでも、他の欧州諸国でも、まだ実現されていない返還案件が数多く残っている。その1つが、ンソ(Nso)族が崇拝するンゴンソ(Ngonnso)と呼ばれるカメルーンの女神像で、プロイセン文化遺産財団がカメルーンへの返還意向を明らかにしたのは2022年のことだった。(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい