盗まれたゴッホ初期作が修復完了──120年前に加えられた顔の描写を除去、本来の姿に

2020年の盗難から3年を経て奇跡的に取り戻されたフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の初期作品《春のヌエネンの牧師館の庭》(1884)。IKEAのバッグに入れられ発見されたことで世に衝撃を与えたこの絵画が、本格的な修復を経て再び一般公開された。

フローニンゲン美術館で展示されるゴッホ《春のヌエネンの牧師館の庭》(1884)。photo: Niels Knelis

2020年に盗まれ、2023年に取り戻されたオランダ・フローニンゲン美術館所蔵のフィンセント・ファン・ゴッホ《春のヌエネンの牧師館の庭》(1884)が、本格的な修復を終え、3月31日に一般公開された。

遠くに教会の塔がそびえる牧師館の庭を女性が歩く姿を描いた本作は、同館のプレスリリースによると、オランダ・ヌエネンにあるゴッホ一家の住居敷地内で制作された。ゴッホはこの教会の塔を気に入り、30点以上の作品に繰り返し描いている。

同作は1962年にフローニンゲン美術館に遺贈されたが、2020年3月30日の未明、貸出先のシンガーラーレン美術館から盗まれた。犯人はガラス製の入口ドアを破壊して侵入し、作品を持ち去った。

その後、オランダ警察と、「アート探偵」として知られる美術専門の私立探偵アルトゥール・ブランドの尽力により、2023年に作品は発見された。ブランドのもとに持ち込まれた作品は、古い枕カバーに包まれ、IKEAの青いバッグに入れられるという異例の状態だった。

修復後のゴッホ《春のヌエネンの牧師館の庭》(1884)。
展示では作品の横に設置されたデジタルスクリーンを通じて、修復前後の写真を比較することができる。photo: Niels Knelis
作品修復の様子。photo: Niels Knelis
作品修復の様子。photo: Niels Knelis

フローニンゲン美術館に返還された後、作品には盗難時に生じた、キャンバス下部の白く露出した深い傷などの損傷が確認された。同館はこの直後、損傷をあえて残した状態で公開している。

その後、修復家マルヤン・デ・フィッセルによる数カ月にわたる本格的な修復が行われた。デ・フィッセルは盗難によるダメージを修復すると同時に、1903年の修復時に女性の顔へ加えられていた細かい描写をつきとめ、ゴッホが描いた当初の状態へと戻した。当時は、作品に直接手を加える修復が一般的であり、この加筆は1903年、ロッテルダムのオルデンゼール・ギャラリーでの販売に際し、作品をより魅力的に見せるため、アマチュア画家によって施された可能性が高いと同館はみている。

さらに修復作業では、ゴッホの書簡や最新の分析技術を手がかりに、わずかに厚く塗られた絵の具層や覆い隠された亀裂、紫外線下で浮かび上がる濃い紫の部分など、肉眼では判別しにくい過去の修復箇所も特定された。

現在、来館者は作品の横に設置されたデジタルスクリーンで修復前後の画像を比較し、その違いを確認することができる。

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