ゴッホ《ひまわり》の所有権をめぐり元所有者の遺族がSOMPOを再提訴。作品の返還と賠償金を要求

ナチスの迫害により強制売却されたと主張するドイツ系ユダヤ人コレクターの遺族が、SOMPO美術館が所蔵するゴッホ《ひまわり》の返還と、過去の展示で得た収益の賠償を求めて再び提訴した。

SOMPO美術館に収蔵されているゴッホの《ひまわり》。Photo: Wikimedia Commons
SOMPO美術館に収蔵されているゴッホの《ひまわり》。Photo: Wikimedia Commons

東京のSOMPO美術館に展示されているフィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》をめぐり、ナチスの迫害により強制的に売却されたと主張する遺族が、運営元のSOMPOホールディングスを再び提訴している

ドイツ系ユダヤ人の銀行家で、アートコレクターのパウル・フォン・メンデルスゾーン=バルトルディの遺族ら3人が提出した訴状では、SOMPOホールディングスの前身である安田火災海上保険会社が1987年のクリスティーズのオークションで作品を購入した際、メンデルスゾーン=バルトルディがナチスの迫害を受けた事実を無視したと主張している。遺族らはまた、今回の訴訟を通じて《ひまわり》の返還と、シカゴ美術館で2001年に開催された展覧会に同作品を出品した際に得た収益の賠償を求めている。遺族の代理人は裁判冒頭で次のように語った。

「裁判官の皆様、この裁判の争点は悪魔との取り引き以外の何ものでもありません。不正な利益と引き換えに富と名声を得た被告は、本来の責任を放棄し、将来を犠牲にしたのです」

メンデルスゾーン=バルトルディはピカソモネルノワールなどの作品を多数所有していたが、《ひまわり》はナチスにより強制的に売却させられたという。遺族は2022年にもSOMPOホールディングスを提訴したが、2024年にイリノイ地裁の下級審は「州での審理に足る関連性がない」として却下した。しかし遺族側は控訴し、《ひまわり》がシカゴで展示された事実が十分な関連性を示すと主張した。

「議会は第二次大戦の戦後処理に関する権限を根拠に、ナチスに略奪された美術品を元の持ち主に返還するためのホロコースト略奪美術返還法(HEAR)を施行した。この法律は、連邦裁判所に対し私たちが求めるような請求を受理し、迅速、公正かつ実質的根拠に基づいて作品を返還するために、最大限の司法権限と裁量権を行使することを求めている」

遺族の代理人は、作品の返還が妥当である根拠として、2009年に制定されたホロコースト(文化財返還)法を挙げた。この法律は、ナチスに略奪された美術品の返還を可能な限り促進するため、46か国が署名した非拘束的な国際協定であるテレジーン宣言の原則を実行に移す目的で制定された。

これに対し、SOMPOホールディングスの代理人は、《ひまわり》がオークションにおいて通常の商取引で売却されたものであり、ナチスによる略奪には該当しないと主張した。また下級審も、テレジーン宣言には法的拘束力がないことから、遺族の訴えを「社会的に望ましいとされる理念にすぎない」と退けている。(翻訳:編集部)

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