世界遺産テオティワカンで銃撃、観光客1人死亡──W杯控え安全神話揺らぐ
メキシコの世界遺産テオティワカンの遺跡で、4月20日午前11時半過ぎ(現地時間)に銃撃事件が発生。32歳のカナダ人女性が死亡し、13人が負傷した。

メキシコの世界遺産テオティワカンの遺跡で、4月20日午前11時半過ぎ(現地時間)、銃撃事件が発生した。32歳のカナダ人女性が死亡し、コロンビア、ロシア、アメリカ、ブラジル、オランダ、カナダの各国籍を持つ13人が負傷した。負傷者の年齢は6歳から61歳にわたり、子ども2人も含まれている。
現場となったのは、同遺跡を代表する建造物「月のピラミッド」で、1人の男性が高さ43メートルの頂上から発砲した。現場を目撃したカナダ人観光客ブレンダ・リーはCTVニュースの取材に対し、「何千人もの人がいて、銃声が何度も鳴り続けていた」と語っている。男は計14発を発砲し、国家警備隊と警察に包囲されて負傷後、現場で自ら命を絶った。
当局はその後、犯人をフリオ・セサル・ハッソ・ラミレスという27歳のメキシコ人男性と特定した。メキシコ州検察総長ホセ・ルイス・セルバンテス・マルティネスは、男は以前からこの遺跡を繰り返し訪れていたといい、「これは衝動的な行為ではない」と述べている。
男の所持品からは拳銃や数十発の弾薬、ナイフのほか、暴力行為に言及する文書が見つかった。メキシコ紙エル・ミレニオによると、着用していたシャツには「Disconnect and Self-Destruct(繋がりを断ち、自らを破壊せよ)」と記されていたという。この表現は、1999年4月20日にアメリカ・コロラド州で起きたコロンバイン高校銃乱射事件以降、インターネット上で再解釈されてきた思想と関連するものとみられており、いわゆる「コロンバイン効果(銃乱射事件の思想や手法を模倣する現象)」との結びつきも指摘されている。ロイター通信によれば、犯人は犯行中に同事件に言及する発言をしていたという。
紀元前1世紀頃から7世紀頃にかけて栄えたテオティワカンは、同時代のローマや長安に匹敵する規模を持つ古代都市だ。遺跡には「月のピラミッド」のほか、高さ約65メートルの「太陽のピラミッド」、都市を南北に貫く「死者の大通り」など大規模な建造物が多数残り、1987年にユネスコ世界遺産に登録された。来訪者数は多く、2025年の年間入場者数は約180万人に達し、今年の春分(3月21〜22日)には3万8000人以上が訪れている。
メキシコの考古遺跡において、過去にこのような銃撃事件の前例はほぼなく、テオティワカンも安全な観光地として認識されてきた。だが、メキシコ、カナダ、アメリカの3カ国共催で2026年6月11日に開幕するFIFAワールドカップを控え、国際的な来訪者の増加が見込まれるなか、遺跡の警備体制には一層の負荷がかかっている。さらに、ワールドカップ関連の文化プログラムの一環として、同遺跡では170万ドル(約3億1000万円)を投じた、30年ぶりの大規模改修も進められている。
同遺跡は22日に警備を強化したうえで公開を再開したが、月のピラミッドは当面閉鎖される見通しだ。